第三部 1979年
姿なき陰謀
権謀術数 その1
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務服の詰襟姿だった。
背広姿の人物たちは、グラナンやノースロップなどの航空機メーカーの技術陣である。
中でも、ひときわ目を引いたのは、全く違う軍服を着た二人の偉丈夫であった。
一人は、帝国海軍の白の詰襟の軍服姿で、胸に目いっぱいの勲章を付けていた。
帝国海軍から派遣されていた駐在武官である、田所海軍大尉であった。
本来、彼は艦艇勤務要員なのだが、米側の申し出にふさわしい人物として参加していた。
もう一人は、北欧系の血を引く金髪碧眼で、ヒトラーが理想としたアーリア人の手本ともいえるような、美丈夫であった。
ユルゲン・ベルンハルト大尉である。
彼の服装は、いつもの陸軍の折り襟服ではなく、空軍の略装であった。
青みがかった灰色の開襟の上着に、揃いの生地で出来た乗馬ズボンに、膝下までの長靴。
胸には、ブリュッヘル勲章の他に、勲五等双光旭日章が輝いていた。
新型の戦術機・F‐14は、既に完成し、量産段階に入っていた。
あとは、米議会での予算執行を待つばかりである。
「……ようやく、長年の夢が形になりましたな」
小柄で痩身の、三つ揃えの姿の30代後半の男が、思わず言葉を漏らす。
「75年から実に4年……
途中のつまらぬ騒ぎが無ければ、今少し早く完成出来たはずだった」
途中、設計主任である、フランク・ハイネマン博士の設計室でちょっとした騒動があった。
彼の部下であるミラ・ブリッジス嬢が突如として、寿退職をしたのだ。
相手は、日本の武家で、篁祐唯。
日米合同の戦術機開発計画の曙計画に参加した折、ミラを見初めて、娶ったのであった。
このことによって、ミラの保持する商標権は、日本に渡ることとなり、その部分の特許権交渉に時間を取られてしまった。
最年長である老提督・ヘレンカーター中将も、つい愚痴じみた言葉になるほどだった。
だが、ハイネマン博士は、気にする風もない。
「ですが、ヘレンカーター提督、クゼ大尉。
今こうして形となったのだ。 新たなる剣として……」
ハイネマン博士の感慨は、如何ばかりであろうか。
来客の一人として招かれていたユルゲン・ベルンハルト大尉は、黙然と見終った。
米軍全体の戦術機運用計画の見直しにあたって、米海軍はそれまで輸出を見合わせていたF‐14の海外販売を一転して認めることとなった。
新型機の披露を兼ねて、各国の軍関係者に販売や供与を含んだ説明会を実施する事になったのだ。
「初めまして、同志・ベルンハルト大尉……」
不意のロシア語に、ユルゲンは思わず振り返った。
そこには、東洋系の海軍将校が立っていたからだ。
件の男は、米海軍の夏季作業服に
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