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冥王来訪
第三部 1979年
姿なき陰謀
権謀術数 その1
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ーの車夫をするほど零落した。
 恩給で生活する復員兵の事を、世人はニコヨンとよんで蔑むほどであった。
ニコヨンとは、2ドル40セントの事で、ドル紙幣2個と10セント硬貨四つから出た言葉であった。
 そんな厭戦的な風潮である。
戦術機産業に関わる人物は、人殺しの道具を作る人間と陰ながら揶揄され、技師たちも開戦当初の熱意が失われ始めていた。
 この米国の世論変化の影響をもろに受けたのが、ハイネマン博士であった。
彼は、F‐14の後継機となる戦術機開発に邁進していたのだが、折からのねじれ国会の影響をもろに受けた。
 議会は新規戦術機の配備数を、3000機から250機にまで減らすように提案し、その予算案が上院を通過した。
これにより、ハイネマン博士が望んだ道は、絶たれることとなったのだ。
 
 議会の方針を政権側が受け入れたのは、国内対策ばかりではなかった。
既に、米国政府としてはG元素爆弾の配備による、新たな国際秩序の形成を秘密目標としていたのだ。
 米国一国による世界支配体制を維持する存在としての核戦力は、その意義を急速に失われつつあった。
ソ連の諜報活動と、核物質を扱う国際金融資本家の策略によって、全世界にそのノウハウが流出してしまった為である。
 米・英・仏・ソ・中共の常任理事国ばかりではなく、南アジアの大国・印パ。
ユダヤ人国家イスラエルや、最近では南アでも核の研究が始まっている。 
 そして、一番の原因は、天のゼオライマーという存在であった。
無限のエネルギーを、異次元より供給する次元連結システムと、それを最大出力で放つメイオウ攻撃。
 核を凌駕し、惑星一つさえ軽々と消し去る、この超マシンの存在を、彼らは身震いした。
日本の一科学者が作ったマシンによって、この東西冷戦の構造は簡単に消え去るであろう。
 異次元の力をつぶすには、異次元の力のみだ。
そういう事で、強力な重力偏重を起こすG元素爆弾の配備を急ぐことにしたのだ。

 一頻り悩む副大統領に、声をかけるものがあった。
彼の弟で、石油財閥の当主であった。 
「ハハハハ、兄さん、これはわたくしたち財界の都合なのです」
 彼は、副大統領はあしらって、
「現在、我々の仲間が、韓国や台湾といった西側後進国に、格安で半導体の製造装置を販売をしている。
その事を、ご存じですね」
「ああ。欧州や日本に対抗するために、輸入規制の法案も準備したからな……」
「近いうちに、新型コンピュータと連動した高性能のソフトウエアが完成します」
 国防長官は、ちらと顔いろを変えた。
このごろ彼の耳へも入っていたことがある。
 通信傍受装置の噂だ。
 石油財閥が、新規戦術機開発に熱を上げるのは、この不正侵入装置を仕掛ける為だ……
ワシントン官衙にいるスズメたちの間では
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