七、 夢を見るといふことはそもそも特異点の存在を暗示させるものである
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な夢場の装置に冷笑を浮かべながら、夢魔の為されるがままに翻弄されてゐる私をざまあみろとばかりに侮蔑してゐるのであらう、夢魔の私を操るその手際にやんやの拍手喝采を送りたげにしてゐるのもまた、事実なのである。或ひは精神分析学者のやうに夢には欲望、或ひは抑圧が顕はれるといふ意見もあるが、淫夢が見たいにもかかわらず悪夢を見ることが殆どの私にとってそれが欲望の顕はれとはどうしても認めることが憚れるやうな夢ばかり見てゐるので、フロイト大先生がいふやうには夢といふものはどうしても解釈できないのだ。そもそも私は無意識といふものに懐疑的であった。仮令、無意識といふ概念を認めるとしても、欲望と抑圧が夢で前意識の検閲から滲み出し、徹頭徹尾無意識が映像化されてゐるものであるにせよ、私が見る夢は悉く私を惨殺するものばかりで、夢の中で語る私の言葉に呼応して夢が変化する様を見るに付け、夢もまたLogosで始まり、惨殺されたときに発する、
――嗚呼。
といふ断末魔のLogosで終わる、終始言葉が夢の映像に先立つ私の夢はフロイト大先生の夢解釈からは外れてゐるもので、私を惨殺する夢ばかり見る私の欲望は自死といふことになるが、それが私が昼間抑圧してゐるものなのであらうか。私はこの期に及んでも生きたいといふのが真実だと思ひたいが、しかし、死を望んでゐるのであらうか。確かに私は不死身ではないのでいづれは死が訪れるだらうが、それでも少しでも長く生きたいといふのが私の本望なのだ。ところが、私は夢で悉く惨殺される。その私が惨殺される様を分厚いアクリル板の巨大水槽の夢世界の外で冷めた目で見てゐるもう一人の分身の私は、心の中では拍手喝采を送りたげにしてゐるといったが、しかし、夢世界の外部のもう一人の分身の私は、終始冷めた目で私が嬲り殺される様を見てゐるのであった。それが何を意味するのであらうか。ここで意味を問ふことは虚しい限りなのであるが、敢へて意味を問ふならばそれが私の欲望、或ひは抑圧された私の発露と仮定したところで、何の解釈にもならないのである。
さて、それはともかくとして、闇尾超がいふ夢の存在が特異点の存在を暗示するといふ命題の解決点は何処にあらうか。私が夢場では分裂してゐるといふことが、即ち夢場が特異点を暗示させるといふ結論を導くと仮定したところで、私には尚以て腑に落ちないのである。さうではあるにせよ、まづ、闇尾超がいふやうに夢を見るといふことが特異点の存在を暗示させるといふことが正しいと仮定しやう。さうすると私が夢に対して抱いてゐる分裂してゐる私といふ感覚は、正しく特異点での去来現が滅茶苦茶な、それでゐて光速を超えて爆発的膨脹をする特異点ならではの特徴と仮定するならば、主体は特異点では分身の術を使ふが如く幾人にも分裂してはそれが一人物へと収束することを繰り返しながら、存在してゐる異
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