七、 夢を見るといふことはそもそも特異点の存在を暗示させるものである
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の為されるがままに夢の秩序に絶対服従させられ、辱めを受け、それをアクリル板の外で、私のもう一人の分身者の片割れが唯見つめてゐるといふ、夢で私は二重に分裂した存在としてあるといへなくもないのだ。これは闇尾超も同じだったものと見え、夢では私といふ存在は分裂してゐるのである。そして、私の意識や夢での感覚は分厚いアクリル板を挟んで光速を越えた速さで内外を行ったり来たりして分厚い透明なアクリル板で隔てられてゐるとはいへ、夢では疎外されながらも徹底的に当事者といふ矛盾をいとも簡単に成し遂げてしまってゐる。さうだからこそ、私もまた、量子もつれを夢では起こしてゐて、光速を越えてアクリル板を隔てて存在する二重の私は、夢の主人公でありながら、その夢から徹底的に疎外されてもゐる二重感覚といへばいいのか、感覚の重ね合はせが起きてゐるのである。その二重感覚は時に私は分裂者として、時に一心同体であるかのやうなものとして感覚は奇妙なもつれ合ひを為して夢は私を翻弄し、そして、それをぢっと凝視してゐる見者としての冷めた私も同時に存在するといふ具合なのだ。これは多分闇尾超にもいへることで、夢に対して私と闇尾超の在り方は同じやうなものであったと想像される。
また、夢世界を形作る夢に存在するもの全てが、現実相の如き装置として夢では活躍する。しかし、夢に出現するもの全てのいづれもが、夢魔により夢に呼び出され、さうしてその存在感を見事に現実相に見せかけるといふからくりをやってのけるのである。そもそも、それでは夢に出現するものとは何なのであらうか。物自体ではないのは確かだ。それでは夢に出現するものどもとは何なのであらうか。それらのものどもは夢に固着してゐてアクリル坂の巨大水槽内の夢世界の私にとってそれは実感を伴った存在なのである。これが夢見の私をまんまと騙し果せるからくりであり、実感が伴ってしまふので、アクリル板の水槽のやうな夢世界の中の私はそれが夢とは気付かずにゐるが、ところが、もう一人の私の分身が夢が展開してゐる水槽の外で冷めた目をして夢を眺めてゐるので、水槽内の私もやがてそれが夢だと気付かされることになるが、夢は実感を伴ってゐる為にそれが中中受け容れられぬのだ。それでも夢に登場してゐるもの全てが、嫌らしくも終始私に現実相を開示する如くに実感が伴うので、私は統覚の誤謬を犯すのである。つまり、夢に登場するものは、私を夢世界に拘束する装置であり、或ひは統覚の攪乱を招いて一つの夢が終はるまで、ずっと私を夢魔に絶対服従させられるそのお膳立てであり、例へば、夢魔が表出する夢の舞台を「夢場」といふやうに名付ければ、夢場の存続を保証するのが夢を形作るもの全てであり、私は、それにまんまと騙されるのである。
ところが、その一部始終を冷めた目で見てゐるもう一人の私の分身の片割れは、夢場を一瞥するなり、そのちんけ
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