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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第194話:アダムの慟哭
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とんでもない裏切り者なんだよ? 君も何時か裏切られる。その時君は――――」
「知った風な口利いてんのはどっちだよ」
「何だと?」

 颯人を面と向かって罵倒するアダムに対し、奏は怒りすら覚える事は無かった。何も知らず、知ろうとせず己の価値観と認識だけでしかものを見る事が出来ないアダムを、いっそ憐れんですらいた。

「ほら、やっぱり完璧じゃないじゃないか。何も知らない、知ろうとできない。そんな奴が颯人の何を語れる? 颯人の爺さんがワイズマンだったから、だから何? そんなの、颯人がアタシを裏切る保障になりはしない。アタシはお前なんかよりもずっと颯人の事をよく知ってるんだ。馬鹿にすんじゃないよ」

 ただ静かに颯人への愛と信頼を口にする奏を前に、アダムは次の言葉が出て来なくなった。反論したいのに反論が頭に思い浮かばない事に、彼はただ奥歯を砕けんばかりに噛み締めるしか出来ない。
 その様子にワイズマンは、大きく溜め息を吐き全てに興味を失ったようにその場に背を向けた。

「はぁ…………もういい。ここにても仕方がない。帰るぞ、メデューサ」
「……はっ」

「あ、待て……!」

 輝彦達が止める間もなく、ワイズマンを始めとしたジェネシスの魔法使い達はその場から姿を消した。後に残されたのは装者と魔法使い、サンジェルマン達錬金術師を項垂れるアダムのみ。全てを失ったアダムを、サンジェルマン達ですら憐れむ様な目で見ていた。

「あれが全てを失った者の姿、か」
「もっとスッキリするものが見れると思ったけど、案外そうでも無かったわね」
「ま、お陰で溜飲は下がったワケダが」

 今まで散々利用され恨み辛みもあった筈のサンジェルマン達が見つめる中、降り立った響がアダムへと歩み寄り手を差し伸べた。

「アダムさん……私達、話し合いませんか?」
「はっ?」

「お前、マジか……」
「流石と言うか何と言うか」
「ヒビキらしいと言えば、らしいのかもしれないがな」

 仲間達が口々に呆れた声を上げる中、颯人と奏は響とアダムの様子を黙って見ている。

「思えば私達、アダムさんと全然話した事無いですよね? 話せばきっと、分からなかった事も分かり合えると思うんです。だから……」

 響の説得に、アダムが応じるように手を伸ばした。手を取ろうとするアダムの姿に響が僅かに顔に笑みを浮かべた、次の瞬間彼はその手を手の甲で払った。

「えっ!?」
「分かり合う? 話し合う? 出来るものかよ、バラルの呪詛がある限りッ! 何より、お前達不完全なものと、完全な僕が対等に立つなどあり得て溜まるかッ!」

 そう叫びながらアダムはアルカノイズの召喚結晶をあるだけ周囲にばら撒いた。次々と姿を現すアルカノイズに、颯人は結局こうなったかと溜め息を吐き
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