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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
魔法絶唱しないフォギアAXZ編
キャロル誕生日特別話:眠れる王子を起こす姫
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…?」

 物凄い勢いでイザークの横を通り過ぎていくキャロルをハンスは呆然と見送り、イザークは目を丸くして見ていた。が、イザークは凡その事情を察した。察した上で、多くをその場で語る事はせずただ静かにベッドの上で唖然としているハンスの肩を軽く叩いた。

「ハンス君……キャロルの事、頼んだよ」
「へっ? は、はぁ、はい、勿論……?」

 未だ混乱した様子のハンスにイザークは笑みを浮かべると、踵を返して部屋から出ていく。部屋を出てリビングに向かう最中、イザークは自分の愛娘と居候させている少年の事を思い浮かべて改めて笑みを浮かべた。
 何時か、2人が本当に男女として結ばれ、孫の顔を拝む時を夢見て…………




***




 微睡みから目覚めたキャロルは、懐かしい気持ちになった。今見たのは彼女の過去。まだ平和だった頃の、本当にただの少女だった頃の優しい記憶だ。

「パパ……ハンス……」

 最近、アリスの治療の甲斐もあって断片的にだがハンス以外の人物の事も思い出せてきた。と言ってもキャロルの過去に関わっていた人物など、ハンスを除けばイザークしかおらず物心がつく前に病で命を落とした母親の事は微塵も覚えていないのだが。

 何だか無性にハンスの顔が見たくなったキャロルは、まだしょぼしょぼする瞼を擦りながらベッドから出て手早く着替えるとそのまま医務室へと向かった。

 医務室の奥の集中治療室。そこには未だ目覚める気配のない、夢の中の様な眠り王子のハンスの姿がある。キャロルは引き寄せられるように彼が眠るベッドの傍らに近寄ると、瞼が開かれる気配のない彼の顔を覗き見た。

「ハンス……」

 キャロルはそっと、”掛け布団から唯一出ている”ハンスの頬に手を添える。手の平を通して彼の頬から伝わる温かさが、彼がまだ生きている事を教えてくれ思わず安堵する。

「ハンス……相変わらず、お寝坊さん? 眠り王子は……お姫様のキスで、起きる?」

 どうやらまだ頭の中も寝ぼけているらしい。何やらぼんやりとした様子のキャロルは、ゆっくりと彼の唇に自分の唇を近付けていった。

 その時、医務室の扉が開かれる音が聞こえてきた。

「ん? 誰か居るのですか?」
「ッ!?!?」

 医務室に入って来たのはアリスの様だ。彼女は集中治療室に続く扉が開かれている事に違和感を覚え少し大きめの声で室内に居るキャロルに気付かず声を掛けた。その声にキャロルは夢の中同様、弾かれるように彼から離れた。

 その直後、集中治療室の中をアリスが覗き見る。

「ん? あ、キャロルさん?」

 ハンスの傍に居たのがキャロルだと気付くと、アリスは彼女に柔らかな笑みを向けた。恐らくは彼の事が心配で様子を見に来たと思ったのだろう。何ら珍し
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