暁 〜小説投稿サイト〜
星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
第八十一話 戦い、その後
[7/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
「あれは…まあいい。私が知りたいのは君の本音だ。小出しにされるのはあまり気持ちのいいものではないからね」



帝国暦485年5月15日11:00
ヴァルハラ星系、オーディン、ミュッケンベルガー元帥府、
エーバーハルト・フォン・ヒルデスハイム

 「報告は目を通させてもらった。マッケンゼン艦隊は残念でしたな」
「艦隊を分けたのがいけなかったのです。でなければああはならなかった…全て私の力不足によるもの。どの様な罰も甘受するつもりです」
策自体は悪くなかった。敵から得た情報を過信したのがいけなかったのだ。
「参謀長ミューゼルの献策による作戦だったそうですな」
「左様。だがミューゼル少将の献策が悪かった訳ではないのです。充分に成算はあった、少々危険ではあったがな。献策を容れた私に責任があるのであって、ミューゼル少将や参謀達に過失はない」
「ふむ…」
元帥の執務室に沈黙が訪れた。察したのだろう、隣室から従卒がティーセットを運んできた。これくらいの気遣いが出来ないと元帥府の従卒は務まらない。
「ミューゼルは使えますか」
「充分に。覇気に富みすぎる面はありますが」
「此度の敗戦、当然ながら皇帝陛下にも報告申し上げました。意外な事にミューゼルの事を気にかけて居られた。アンネローゼの弟は息災か、と」
「ほう」
「こうなると、敗戦の責をミューゼルに負わす訳にもいきません。かといって誰も責任をとらない訳にはいきません。マッケンゼンの上級大将への特進は無くなりました」
「……死者に全て押し付ける、と」
「現に彼奴の艦隊の不手際が作戦に過大な影響を与えている。その点はリッテンハイム侯もしぶしぶながらお認めではあった」
「ですがマッケンゼンの殿戦があればこそ、我々はこうして生還は出来たのですぞ。その点は考慮していただかねば、マッケンゼンも浮かばれますまい」
「…全て決した事です」
「であれば私も一線を退こう。でなければリッテンハイム侯が治まるまい。大貴族の横槍は辛かろう?」
「…横槍はともかく、退いてどうなさるというのか」
「貴族達の艦隊を訓練し、万が一に備えようと思う」
「それは」
「邪な思いからではないのだ。もし軍に何かあった時、貴族が藩塀としての役目を果たさねばならん。いざその時になって貴族の艦隊が使い物にならない、では話にならんからな」
「…軍が敗れるとお思いですか」
「敗れるとは言っていない、万が一に備えると言っている」
「万が一、ですか。了解しました。艦隊はどうなさるおつもりか」
「二万隻近くはいる筈だが…一万隻は軍に譲ろう」
「宜しいのですか」
「その代わりといってはなんだが、頼みがある。ミューゼル少将を昇進させて欲しい。艦隊司令官に据えて貰いたいのだ」
「…伯の手前、皆申しませんが此度の敗戦の原因
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ