第八十一話 戦い、その後
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えさせる為に。可能性は五分五分でしたけどね。それに囮役をやれとグリーンヒル大将に命令されていました」
俺も紅茶入りブランデーに変える事にした。本当に酒が止まらなくなりそうだ。
「そうだね、それもあるだろう。私が言いたいのは、君はミューゼル少将の性格を知っていてあの罠を仕掛けたのではないか、と言う事さ。君は五分五分と言ったが、本当は成算があったからああいう罠をかけたんじゃないか?もしそうなら君は君は帝国軍からつけ狙われるぞ。自分達の事を知っていて攻撃してくる敵なんて厄介極まりないからね。だからしばらく前線に出ない方がいいと言ったんだ」
ヤンさんはくるくるとマグカップを回していた。確かにそんな敵が居たら気味が悪いだろう。相手にしないか必ず殺すかしかないけど、攻撃の主導権は此方にあるから、帝国軍としては相手にしない訳にはいかない。
「つけ狙われる…私がですか?確かにミューゼル少将が居るだろうと思って罠を仕掛けましたけど…それが何故帝国軍から狙われる様になるんです?」
ラインハルトから狙われるだけじゃなくて、帝国軍全体から狙われるだって?そんな無茶な…。
「君は今まで参謀、補佐役として存在感を示してきた。同盟軍の内部ではアッシュビーの再来と騒がれていても、帝国にとってはどうでもいい存在だった。だがイゼルローン要塞攻略で一気に名が売れた。君が立案者だと公表されたからね。それでもまだ帝国にとっては霞んだ存在だ。注意する存在かも知れないが、参謀には実行力はないからね。だけど君は艦隊司令官になり自らの力を手にした。そして今回の戦いだ」
ヤンさんは冷めたマグカップを一気に飲み干す。
「君は今回の戦いで、自らの二倍の敵を手玉にとって、一個艦隊を殲滅した。殲滅したのは君じゃないかも知れないが、そう仕向けたのは君だ」
手玉に取られる方が悪い、と言おうとしたけど、言える雰囲気じゃない。普段暢気で柔和なヤンさんでもこんな顔をする事があるなんて…。
「囮役を務めるのは難しい。捕まっても駄目だし、当然撃破されても駄目。もしそうなりそうな場面でもそれをはねのける能力と実力が要求される。特に今回の様な場合は尚更だよ。普通は嫌がる任務だけど、君は何の抵抗もなく受け入れた」
命令だからやらなきゃいかんでしょう…反論になってない。
「まさか後からヒルデスハイム艦隊が出てくるとは思わなかったんです。マッケンゼン艦隊だけなら、あんな危険な作戦やりませんよ」
「だが君は実行した。勝てると思ったから実行したんだ。敵を罠に嵌めるには敵の心理を読まなければ無理だ。君は的確にミューゼル少将の心理を読んで罠に嵌めた。どうしてこんな事が出来るのか」
ヤンさんは紅茶から再びブランデーに戻した。
「ヤンさんだって実行したじゃないですか、エル・ファシルで。あれが私の教科書です」
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