第八十一話 戦い、その後
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も左腕を包帯で吊っていた。何という事だ。俺のせいで……。
「戦闘はどうなった?」
キルヒアイスが話す内容はひどい物だった。ウィンチェスター艦隊の撃破を断念して退却の為の変針に入ったところ、ノイエンドルフは右舷機関部に直撃を受けた。俺は昏倒、ヒルデスハイム伯は司令官席から投げ出され、左上腕を骨折、左半身打撲の重症、キルヒアイスも左下腕部骨折、ミッターマイヤーは頭部裂傷、ロイエンタールは肋骨を骨折…俺もそうだが、伯爵も一時的に意識を失っていたそうだ。我々を助ける為にマッケンゼン艦隊の中央部が遮二無二前進、我々の前に立ちはだかり、ヒルデスハイム艦隊は救われたものの、我々の撤退を援護する為にそのまま殿軍となったマッケンゼン艦隊は、三方向から現れた叛乱軍三個艦隊に半包囲され壊滅したという。
「我々の残存艦艇は七百四十ニ隻、我々が助かったのはマッケンゼン艦隊の奮闘もありましたが、ハーン方面の哨戒に向かったアントン、ベルタの両艦隊がこちら側の状況を知ってを知ってアムリッツァ宙域に急ぎ侵入したからです」
「そうか…こちら側には間に合わぬと知って…」
「はい。アムリッツァ宙域ではアントン、ベルタ両艦隊とカイタルに残存していた叛乱軍一個艦隊とで一進一退の睨み合いの状況の様です。その急報を受けたのでしょう、叛乱軍三個艦隊は撤退しました」
「そうか…司令官の自室に行ってくる」
「私もご一緒します」
「いや、大丈夫だ。心配をかけたな、キルヒアイス」
ウィンチェスターを討つ千載一遇の機会だった。
“されば奴は自分の価値を天秤にかけているのではないか”
その通りだ。奴は俺がいる事を知って、罠をかけたのだ、自分に向かって来るであろうと俺の心を読んで…。俺が居なければマッケンゼン艦隊は全滅せずに済んだ筈だ。追撃戦のまま推移し、奴は無理をせずに撤退しただろう…いや、分からない、何らかの任務帯びている訳ではなく、最初からただの囮だったのかも知れない。叛乱軍は我々がアムリッツァに近づかない事を知っている。だが時が立てば我々も戦力は充実していく。奴等も手をこまねいてそれを見ている訳にはいかない、機会があれば少しでもこちらの戦力を削ごうとするだろう…。ウィンチェスターを救うだけなら二個艦隊もあれば充分だ。だが奴等は三個艦隊を出撃させた。叛乱軍は、のこのこと帝国艦隊が現れるのを待っていたのだ……。
伯爵の自室に入るのを逡巡していると、ドアが開いた。
「部屋の外にはカメラがある、卿は忘れていたかな。さあ、入りたまえ」
私はこれで、と軍医が部屋を出ていく。
「折れたのは左腕だけだと思ったら肋骨も折れていたらしい。打撲傷にしては痛い筈だ、軍医が可哀想なくらい頭を下げてきたよ。参謀長、大事ないか?」
「小官は大丈夫です、閣下こそ大丈夫ですか」
「どう
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