第二章
16.サマルトリアの王子
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。ハーゴン教団が復活しようとしている。しかも、どうやら君たちがそのリーダー。知ってしまったら仕方ない」
そう言いながら背中に背負っていた盾を左手で持ち、右手で腰に差していた剣を抜く。
「やはり、先ほどの私の話は信用していただけないのですね」
「さっきの鎧さんほどは疑ってないよ。でもごめんね。ここで僕が見逃すと……あいつが、ロスが戦わないといけなくなってしまうから」
剣は鋭い輝きを放つ細身の直剣だった。鍔には隼の意匠が施されている。
盾は金色で縁取られており、中央には宝石が埋め込まれていた。
「教団再建を着手し始める前に、彼に遭いました」
「えっ。あいつにも再会してたんだ? 会話はしたの?」
「はい。改宗してローレシアに来てほしいと言われました。二度と邪教が生まれてこないようにしたいので、教団の、特にハーゴン様についての情報を提供することで協力してほしい、と」
「そのときはひとまず承諾したとか?」
「いいえ。その場で『改宗はしません』とお断りしました。私はハーゴン様がお作りになられた教団の信者で、悪魔神官ハゼリオ様の部下です。ありえません」
サマルトリアの王子は感心したような表情も交ぜてきた。
「その答えかたをして、いま君が生きてるのって、すごいね」
「偶然がいろいろ重なりまして。戦いになりましたが、奇跡的に逃れることができました」
「それはたぶん本当に奇跡だ。でも、あいつは頑固者で、クソがつくほど真面目で、絶対にあきらめない男だよ。一国の王として、勇者ロトの子孫として、ハーゴン教団の再建なんて絶対に許さないだろうね。君たちが教団再建を目指し続ける限り、いつか必ず攻め滅ぼすつもりでいるはずだよ」
「そう、でしょうね……」
「でも僕はもう、あいつには戦ってほしくない。あいつはいつも先頭に立って敵を斬り倒してた。つらそうな顔なんて一度も僕に見せたことなかったけど、世界で一番長くあいつの背中を見てきた僕にはわかる。あれだけ体と心が強くても、戦い続けて、自分の手で命を奪い続けることは、しんどいことなんだ」
今度は、やや遠くを見ているような微笑。
緊張も恐怖も感じていたフォルだったが、サマルトリアの王子が見せる表情を感じ取ることができていた。
「僕はもともと、妹や父さんが何にも怯えずに暮らせるようになればいいという思いでハーゴン討伐の旅に出たけど。あいつと合流してからは、ハーゴンを倒せばあいつが戦わなくていい世界になるから、だから頑張ろうという思いも、同じくらい、いや、それ以上に強くなった気がするよ。
旅の途中でも、あまりあいつに人殺しをさせたくないと思ったから、頑張ってマホトーンを覚えた。そうすれば信者はみんな戦わずに逃げてくれるかもしれないと思ってね。あと、あまりあいつ
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