第五幕その五
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「堀与さん何処かで見たかな」
「何処かって?」
「いや、何かね」
王子に応えて言いました。
「それが何処かはわからないけれど」
「それでもなんだ」
「そんな気がするんだ」
「知り合いの人かな」
「いや、どうだったかな」
先生は首を傾げさせて応えました。
「そこまではね」
「わからないんだ」
「そうだけれどね」
「先生お会いしてきた人多いしね」
王子もミルクティーを飲んでいます、そのうえで先生に応えました。
「だからだね」
「その中におられるかな」
「似ている人が」
「どうだったかな」
「例えばね」
王子はこうも言いました。
「絵とか写真でも」
「芸術のだね」
「あと資料で」
「学問の時のだね」
「それでかな」
「そうかも知れないね」
先生も否定しませんでした。
「学んでいるとね」
「肖像画とか写真も見るね」
「うん、人のね」
「そうだね」
「だからね」
「その中で記憶にあるとなると」
「ちょっと誰かはね」
それこそというのです。
「わからないね」
「そうだね、それで堀与さん薩摩弁の訛りがあるとしたら」
「出身はだね」
「そっちかな」
鹿児島ではとです、王子は思いました。
「どうかな」
「その可能性はあるね」
先生も否定しませんでした。
「やっぱりね」
「そうだよね」
「ただ昔の薩摩弁は」
「今は鹿児島県でもだね」
「知っていてね」
そうしてというのです。
「喋られて理解出来る人は」
「僅かなんだ」
「うん、そうだからね」
それでというのです。
「それを使うとなると」
「かなり限られているね」
「堀与さんは四十代前半みたいだけれど」
「その年齢で昔の薩摩弁となると」
「ちょっとね」
どうにもという口調でお話するのでした。
「いないんじゃないかな」
「そうなんだね」
「うん、鹿児島弁なら兎も角」
今現在のというのです。
「ちょっと合わないね」
「そこが不思議なんだね」
「僕はね」
そう思うというのです。
「どうにもね」
「今の鹿児島弁も流れを汲んでるね」
「薩摩弁のね」
「それじゃないかな」
「そうかもね、じゃあね」
「うん、少しだね」
「ご本人に聞いてみようか」
堀与さんご自身にというのです。
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