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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
自由惑星同盟の最も長い3カ月
元帥閣下たちの政争指導
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位にあるわけだ,ヤン生徒のお陰でね」
 シトレ元帥は重々しく椅子の背もたれを軋ませる。
 次席高級副官は機敏に本部長の思いを汲んで見せた。
「その通りです。多少の反発は理解を得ることができます。地上軍はモノの数には入りません」

「縁故主義と軍国主義がはびこる同盟を救わねばならない。イゼルローン要塞の奪還、30年目を迎える前に本部長直轄の作戦で成功した。今こそ、この時しかない。不要な地上軍を削減し、トリューニヒトの政治屋軍人共やラザールを担ぐ過激派を商船企業に叩き込んでやる!」
 せいぜい情報交通委員会が苦労するといい、とシトレはほくそ笑んだ。
「ええ、議会の保守派と人気取りしか頭にない連中の党派主義をねじ伏せ、国軍の統制を護る時です」
 そして第7次イゼルローン攻略作戦を除けば最良の要塞攻略作戦の指導者として名を馳せるシトレ元帥は、往年の如く大規模な攻勢計画を、銃後においても作戦指導を開始した。
「まず自由党と労農連帯党を固めるとしよう。後は議長を頷かせればよろしい。問題は同盟弁務官だ。上院は厄介ではないかね」
 政治部門の参謀をつとめるアレックス・キャゼルヌ次席副官は頭を振って見せた。
「だからこそ、です。下院を固めれば選挙区が重複する国政政党を通して話ができます。下地はいずれにせよ下院の国政政党である以上、そこで党派を固めれば弁務官に話をする下地ができます」
「政治においては常に悲観的に行動するべきですが今は慎重なればこそ大胆に進めましょう」
 信頼のおける幕僚の言葉にうなずき、シトレは通信端末を手に取った。
 ――やあジョアン、君のところの幹事長に連絡を取りたいのだけれどね。



 その数日後、ガラティエ共和国にて政権与党の党幹部と議会の防衛委員会委員、そしてガラティエ軍統合参謀本部の幹部が集まっている中、ガラティエ駐留艦隊幕僚長のビューフォート大佐は内心、胃をさすりながらにこやかに対応をしている。
 この場の最上級者ユリウス・マリネッティ国防大臣は面白そうに30半ばの年若い大佐を眺めている。彼もまた似たような軍歴を経て准将まで登ってから政界に転身したやり手である。
「つまり今回の君のレクチャーの要点は、シトレ元帥の案は軍の総意ではないということかね?」

「はい、その通りです。軍の方針の変革・および改革は自由惑星同盟の存続にとっては必要であることに疑いはありませんが、地上軍の軍縮や構成邦軍の“自律的な財源の確保”、そしてなにより駐留艦隊の“段階的な縮小による宇宙港の民生転換化”は過剰であると我々は考えております」
 じろり、とセルカン・ヴァロル参謀総長がにらみつける 。彼はガラティエ軍人の主流派中の主流、『歩兵畑』の男である。
「我々とは?」
 シトレ元帥のぶち上げた人事案
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