敢闘編
第八十話 誤算
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だからこそ圧倒的に有利な体制で、完璧に勝とうとするだろう。分進合撃からの包囲戦だ。艦隊司令官なら必ずそう考える。俺達は彼等がそう考える様にただひたすら逃げればいい。ラインハルトが俺達に追い付く頃には完全に包囲されている事だろう。ひっかかってくれたら、の話だけど…。
4月18日05:30
銀河帝国軍、ヒルデスハイム艦隊旗艦ノイエンドルフ、
ラインハルト・フォン・ミューゼル
「罠、ではありませんか」
ロイエンタールの表情は厳しい。ウィンチェスター艦隊は自らの座標を発信しながら、ひたすらに逃げている。
「敵の通信は、さも恐慌をきたしている様に見えますが、少々あざといのではないかと…きつい香水の香りのする女には、関わらない方がいい」
彼らしい例え方に、ミッターマイヤーが苦笑した。きつい香水の香りする女、か…ロイエンタールはその手の経験が抱負とは聞いているが、言い得て妙な表現だ。先行する我々の後方にマッケンゼン艦隊。我々が追い付き、敵の足を止めたところでマッケンゼン艦隊が我々を迂回、その後側面または敵前方から攻撃する。単純だが、確実な攻撃方法だ。
「だがロイエンタール、今追っている敵は大物だぞ。叛乱軍によるイゼルローン要塞攻略の立役者だ。倒す事が出来れば、叛乱軍に与える心理的効果は大だろう。知っているか?向こう側では、奴の事をアッシュビーの再来と呼んでいるそうだ」
「アッシュビーの再来…俺もその様な二つ名を賜りたいものだ。されば奴は、自分の価値を天秤にかけているのではないか」
ロイエンタールとミッターマイヤーのやり取りにキルヒアイスが割って入る。
「その可能性は充分にあり得ますね。ウィンチェスターは帝国でも有名な叛乱軍の将帥です。戦場で自分が帝国に倒される事が、どれだけ叛乱軍に不利をもたらすかを知っているのでしょう。そして彼はこの追撃戦で、追っているのが我々…ヒルデスハイム艦隊である事に気づいている筈です。そしてラインハルト様がこの艦隊の参謀である事も知っている。ラインハルト様は以前からウィンチェスターと浅からぬ因縁があります」
「ほう…興味深いお話ですな。ミッターマイヤー、卿もそう思わないか」
「そうだな…どの様な因縁がおありなのですか、参謀長。宜しければ教えていただけませんか」
話すべきか…そうだな、いずれ彼等にも分かる事だ。
「駆逐艦に乗り組んでいた頃の話だ。イゼルローン回廊でウィンチェスターに艦を臨検、拿捕された」
二人は当然ながら驚いた顔をした。叛乱軍に艦を臨検されるなど恥辱以外の何物でもないし、ましてや捕らわれずに生還出来る事など期待出来ない。
「それは…よく、ご無事でしたな」
「運良く味方が駆け付けてくれたのだ。ミッターマイヤー大佐、卿は叛乱軍と直接顔を合わせた事があるか?」
「あります。カプチ
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