敢闘編
第八十話 誤算
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イヤーがオペレータから通信文を奪う様にもぎ取った。
「これは…おい」
今度はロイエンタールがミッターマイヤーから通信文を奪う。
「敵三個艦隊は既にカイタルから出撃しております。明日十九日一六〇〇時にはボーデン宙域中心部に到着する模様です」
宇宙暦794年4月18日05:00
ボーデン宙域外縁(ヴィーレンシュタイン方向)、自由惑星同盟、自由惑星同盟軍、第十三艦隊旗艦グラディウス、
ヤマト・ウィンチェスター
制御卓に足を投げ出して艦長席に座るアッテンさんと、ちびちびとマグカップをすするマイクが呟く様に話している。
「本当にひっかかるのかねえ」
「どうでしょう、五分五分じゃないですか。俺達の撃破を優先するなら向かって来るでしょうが。仕掛けを拵えたヤマトとしては、この折角の機会を逃したくないでしょうがね」
「そうだよな。ミューゼル少将とやらを高く評価しているウィンチェスターと違って、あちらさんには俺達を遮二無二撃破しなきゃいけない理由はないからな」
「そうですね…って、アッテンボロー艦長。いくら司令官が後輩とはいえですよ、艦橋での任務中に司令官を呼び捨てにするのはよろしくないと思うんですがね」
「…じゃあ艦橋での任務中にブランデーを飲んでいるお前さんはどうなんだ?怠慢だぞ」
アッテンさんはそう言いながら、マイクからマグカップを奪い取った。司令部艦橋でのやり取りはこの艦の乗組員からは見えないからいいようなものの、ちょっとひどい。ワイドボーンがカリカリする訳だ。大体、発案者である俺に聞こえる様に『敵は本当にひっかかるのか』は無いだろう!…まあ五分五分なのは確かですがね…おそらくラインハルト達が俺達に追い付くのはあと三時間ほど…マッケンゼン艦隊はやはり何かのトラブルがあったのだろう、ヒルデスハイム艦隊の後方から距離を取って追従していると思われる。
マグカップの取り合いをしているマイクとアッテンさんを尻目に、ヤンさんが他の皆に説明を始めた。
「そもそも、帝国軍の二つの艦隊にとって、我々を撃破しなくてはいけないという特別な理由はない。我々が帝国領内をうろうろしていて、自由にさせる訳にはいかないからこそ追撃を行っている。領内から追い払ってしまえばいいのだから、撃破は二の次なんだ」
そう言ってヤンさん自身もマグカップを大事そうに持っている。何が入っているのか知っているのだろう、それを見たワイドボーンが苦々しい顔をしながら口を開いた。
「それは分かります。であれば、我々の通信を傍受しているであろう帝国艦隊は不利を悟って撤退するのではないですか?」
ワイドボーンの疑問はもっともだ。だけどラインハルト達には退けない理由がある。
「もっともな疑問だね、大佐。だが彼等には撤退出来ない理由がある。ここが帝国領内という事実だ」
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