第二章
[8]前話
「いいな」
「ああ、しかし海草を食ってもかい?」
兎は海草が身体にいいと聞いてトドに問い返した。
「海の神様の妹さんはよくならなかったのかい」
「これがな」
「そうなんだな」
「だからだ」
「海の皆は薬を探しているんだな」
「そうだ、ではな」
「ああ、山菜を色々取って来るからな」
「こっちは海草を取って来る」
こう話してだった。
お互い山と海に戻ってそこで山菜と海草を取って来た、トドはその山菜達を海神の妹のところに持って行って食べてもらうと。
「これがだ」
「治ったんだな」
「そうなった」
こう兎に海辺で話した、狼も一緒にいる。
「あっという間にな」
「それはよかった、おいらもな」
兎も笑顔で言ってきた。
「海草を食ったらこれまで以上にな」
「健康になったか」
「そうなったよ」
こう言うのだった。
「嬉しいことにな」
「それは何よりだな」
「ああ、しかし不思議だな」
兎は前足を組んでこうも言った。
「海草食って余計に健康になってな」
「妹様の病が治ってか」
「お互いそうなるなんてな、万病に効いてもな」
「それはだ」
狼がここで話した。
「偏食は駄目ということじゃないか?」
「偏食?」
「海のものばかり食べても栄養が偏って」
狼はトドに答えた。
「山のものも食べてこそな」
「栄養バランスがよくなってか」
「万病に効く薬は海にもあってもな」
「偏ってか」
「効き目がないな」
「そうなんだな」
「だから若しわし等が病気になって」
狼はその場合のことも話した。
「身体が悪くなって薬が必要になって」
「山のものばかりだとか」
「よくないかもな」
「そうなるんだな」
兎は狼の話に目を丸くして応えた。
「おいら達も」
「そうかもな、だからな」
「海のものも山のものもバランスよくか」
「摂ることだな」
「食いものも薬もだな」
「両方な」
「じゃあわしもそうしよう」
トドは狼の言葉に頷いて言った。
「それが身体にいいならな」
「おいらもそうするか、海草美味いしな」
「ああ、皆でそうしよう」
狼も二匹に言った、そうしてだった。
生きもの達は海のものも山のものも口にする様になった、そうして皆健康になって病もすぐに治る様になった。アイヌの古い話である。
トドと兎 完
2023・10・13
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