第二章
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「そこに酒を入れるな」
「そうする」
「とてつもなく重くなるぞ」
「俺がいる」
顔の下半分を覆う赤髭に鬣の様な髭と同じ色の髪の毛を持つエーギル以上に大柄で逞しい身体を持ちぎらぎらする目に質素な服の神が出て来て言ってきた。
「運ぶ者はな」
「トール、貴殿がか」
「そうだ、だからだ」
「大丈夫だというのか」
「ああ、美味い酒を飲むぞ」
トールは笑って応えた。
「そのうえでな」
「お主でも無理ではないか」
エーギルは首を傾げさせてトールに述べた。
「幾ら何でもな」
「重過ぎるか」
「ヒュミルがいる場所はだ」
エーギルはそちらの話もした。
「巨人の国でだ」
「それでだな」
「この者の祖母もいるが」
ティールを見て話した。
「多くの頭を持ち」
「俺達神々が大嫌いでな」
「それでだ」
そのうえでというのだ。
「わしが言ってもだ」
「元々巨人でもだな」
「聞かぬ、神になったからと言ってな」
出自はどうであってもというのだ。
「聞かぬ、それどころかな」
「お主を見るとか」
「襲い掛かって来る」
そうしてくるというのだ。
「あの婆さんはな」
「そしてその婆がいるからか」
「容易ではないぞ」
その釜それに酒を手に入れることはというのだ。
「それを持って来たらと言ったがな」
「それでもか」
「容易ではないことはな」
このことはというのだ。
「言っておくぞ」
「左様か」
「左様だ、それでも行くか」
「行って来る、では馳走を用意していろ」
トールはエーギルに豪快に笑って応えた、そうしてだった。
彼はティールと共に釜と酒を手に入れに言った、エーギルはその彼等を見送ってから従者達にやれやれといった顔で話した。
「釜と酒どころか五体満足で帰って来られたらな」
「それでよしですね」
「この度は」
「左様ですね」
「流石にあの二人が死ぬとは思わないが」
トールとティール、神々の中でも強者の彼等がというのだ。
「しかしな」
「相手が相手ですから」
「傷は負いますね」
「そうなりますね」
「そうならぬ筈がないわ」
こう言ってだった。
エーギルは馳走ではなく二人の傷の手当てを行う準備をする様に命じた。いきなり酒を出せと言われて不満でもだ。
同じ神々だけあって情はあった、それでだった。
二柱の神々の帰還を待った、彼も従者達も彼等が釜と酒を持って帰って来るとは思っていなかった。だが。
トールがティールを連れてとてつもなく巨大な釜を両手で高々と持ち上げて帰って来てそうしてだった。
それを自分の目の前で下ろして酒を見せてきて仰天した。
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