第一章
[2]次話
エーギルの釜
この時海の神エーギルはすこぶる不機嫌だった、その顔で従者達に言っていた。そもそも巨人だけあって神々の中でもすこぶる大柄で逞しい身体をしている。白く長い髪の毛と髭を持つ初老の男で青い服は質素である。
「いきなり来てだ」
「そうしてですね」
「酒を出せだの」
「そう言って来るとは」
「わしは海の神だ」
だからだというのだ。
「それでだ」
「はい、海の幸は出せます」
「何でも」
「ですが酒は違います」
「あれは麦等から造ります」
「ある筈がない」
それこそというのだ。
「多くはな」
「左様ですね」
「確かにこの宮殿にも酒はありますが」
「アスガルドの神々は飲む分はです」
「ありません」
「あの連中特にトールは飲む」
雷神である彼はというのだ。
「だからな」
「それで、ですね」
「この度はですね」
「どうしたものか」
「一体」
「こうなったら連中に言おう」
そのアスガルドの神々にというのだ。
「そしてだ」
「そのうえで、ですね」
「出させますね」
「そうさせますね」
「そうさせてだ」
そしてというのだ。
「飲んでもらおう」
「飲むのなら飲む者達に用意させる」
「そうしますね」
「この度は」
「そうしよう、では連中に言おう」
こう言ってだった。
エーギルは実際に神々に言った、すると右手首がなく引き締まった体格に濃い髭と青い目と黒髪を持つ戦いの神ティールが言った。
「ではだ」
「お主に知恵があるか」
「わしの父の巨人の賢者ヒュミルに頼もう」
「ああ、あの有名なか」
エーギルはティールに応えた。
「あの賢者にか」
「父はこの世で最も大きな釜を持っている」
「それに酒を入れてか」
「そしてだ」
そのうえでというのだ。
「飲もう」
「そうするか」
「うむ、これよりな」
「わかった、かしだ」
エーギルはここまで聞いてティールに述べた。
「聞くところによるとだ」
「その釜はだな」
「とてつもなく大きく重くだ」
そうしたものでというのだ。
「それだけで持ち運ぶことはな」
「難しいか」
「そしてだ」
それに加えてというのだ。
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