第三章
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「まだましなアメリカ軍やイギリス軍がいる方にだ」
「国民を逃がし」
「戦争を終える、もう何の力もない男なぞだ」
「追っても仕方ないですか」
「そうだ、気にすることはない」
ボルマンのことはというのだ。
「そのうちどうなったかわかる、ではな」
「我々はですね」
「やるべきことをやろう」
「国民を一人でも多く西に逃がす」
「彼等の安全の為にな」
「少しでもましなそれの為に」
「そうしていこう」
こう言ってだった。
デーニッツは自分のすべきことをしていった、彼は姿を消しそして何の力もなくなったボルマンのことは気にもしていなかった。
だがボルマンの行方はようとして知れず。
「ドイツ国外に逃げたか?」
「アイヒマンは南米にいると言っていたな」
「まさかナチスを復活させる気か?」
「ナチスの高官で只一行方が知れないが」
「まさかと思うが」
多くの者は彼の行方を探した、だが。
デーニッツはその話を聞いてこう言うだけだった。
「あの男が生きていてもだ」
「それでもですか」
「ナチスの復活なぞ出来ない」
強い声で言い切った。
「所詮な、もうだ」
「ヒトラー総統がいないので」
「只の切れた尻尾だ」
それに過ぎないというのだ。
「そんな者がだ」
「何が出来るか」
「何も出来ない、そもそも考えることすらだ」
ナチスの復活、それをというのだ。
「ない、あの男は権力に媚びてだ」
「その権力を得る」
「笠に着るだけだ」
「だからですか」
「そんなことは出来ない、例え生きていてだ」
そうしてというのだ。
「南米に逃げていてもな」
「それでもですか」
「あの男は何も出来ない、気にすることはない」
「生きていても」
「最早あの男は何でもない」
こう言った、そしてボルマンの話を止めた。
ボルマンの行方はずっと知れなかった、しかし二十世紀の終わりになり。
終戦直後発見された身元不明の遺体ボルマンのものではないと思われるもののDNAを検査するとだった。
それがボルマンのものだとわかった、ここでマルティン=ボルマンが完全に死んだとわかった。しかしこのことでどうかと思う者はいなかった。彼が諂っていたヒトラーはいなかった、その為誰もどうも思わなかった。
蜥蜴の尻尾 完
2023・9・11
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