第二章
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「だからな」
「お二方もですね」
「去った、私は残るがな」
「宣伝相はですね」
「私にも誇りがある、欲もあるが」
ゲッベルスは自らボルマンにあるそれを自らにもと言った。
「しかしだ」
「それでもですね」
「あの男とは違う、ドイツも総統閣下も党もだ」
その全てをというのだ。
「今も見ている」
「忠誠心がおありですね」
「あの男は自分しか見ていないがな、自分しか見ていないからだ」
「権力を求めて」
「今も尚だ」
ナチス=ドイツの崩壊が間近な状況でもというのだ、彼等がいるベルリンの地下壕にまで連合軍の爆撃による衝撃が響き報告ではソ連軍がベルリンに迫っているとある。
「総統のお傍から離れないのだ」
「あくまで、ですね」
「そうしているのだ」
「自分の権力の為に」
「まさにな」
こう言うのだった、そしてだった。
ソ連軍が遂にベルリンに突入しヒトラーのいる総統官邸まであと数区画のところまで来た、ここでだった。
ヒトラーは自分の後継者に海軍元帥カール=ゲーニッツを選び首相をゲッベルスとし党の代表はボルマンとした、そのうえでエバ=ブラウンとの結婚式を挙げスパゲティを食べた後で拳銃自殺を遂げた。
そしてゲッベルスもヒトラーの後を家族と共に追い残ったゲーニッツはドイツ国民を一人でも多く危険極まるソ連軍から逃す為西に向かわせたが。
ある者がその彼に報告した。
「党代表ですが」
「ボルマンだな」
デーニッツはその小さい目をその者に向けて言った。
「姿が見えないな」
「総統閣下が自殺されてから」
「あの男は尻尾だからな」
デーニッツは何でもないといった顔でこうも言った。
「所詮な」
「尻尾ですか」
「そうだ、蜥蜴の尻尾は付いているからこそいいのだ」
そうであってこそというのだ。
「だが身体から離れるとどうなる」
「動いています」
その者はデーニッツの問いに答えた。
「暫くは」
「暫くはな、だがな」
「それでもですか」
「やがて動かなくなる、あの男はその尻尾だ」
「蜥蜴の」
「総統閣下がおられてこそだ」
ヒトラー、彼がというのだ。
「その権力もあった、だが」
「閣下が自決された今は」
「あの男は何でもない」
ヒトラーがいなくなってはというのだ。
「だからだ」
「権力もないので」
「あの男が何よりも好きだったな」
常にヒトラーの傍にいて諂うことであったそれがというのだ。
「それがなくなった、だからな」
「去りましたか」
「そうなった、だが構うことはない」
「追わずとも」
「そんな余裕はないしな」
今の自分達にはというのだ。
「ここにもうすぐソ連軍が来るしな、それにだ」
「一人でも多くですね」
「彼らから国民を逃がすのだ」
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