暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第三部 1979年
孤独な戦い
匪賊狩り その4
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『この間に、()す気なのか』
赤軍大尉は、多少身構えてもいたが、そんな気ぶりはない。 
 赤軍大尉にとって、その懸念は全く根拠のないことではなかった。
彼は、かつてハバロフスクでマサキによって己の父を殺され、幾度となく復讐の機械を伺った相手であった。 
 またソ連赤軍とマサキも、この事件に遭遇するまで、お互いに砲撃をしたり、銃を撃つ闘争を演じる間柄だったからだ。 
 しかもその深怨(しんえん)を含む、お互いの意識は今日にいたっても少しは消えてはいなかった。
油断のならない敵であり、警戒を有する相手であった。
「敵が来るぞ」
 マサキは慌てず、袈裟の下から手投げ弾を取り出す。
そして、驚くラトロワたちの前に見せつけた。
「これが何だか、わかるか」
 生気の軍人教育を受けた彼等には、即座に分かった。
マサキが手にしているのは、米軍が開発配備している、M26手榴弾だった。
 勢いよく放り投げると、敵兵が驚く間もなく爆散した。
「貴様ら、無茶苦茶だ」 
「俺たちをとらえるには、2、30人の兵士では無理なのさ」
マサキは、二人のソ連兵をかえりみて、にこと微笑しながら大言を吐いた。

 赤軍大尉は、マサキの態度を疑い、むしろ不安をすらおぼえた。
マサキが装備しているものは、米国製の小銃と銃剣のみ。
精々、隠し持った武器といえば、手投げ弾と拳銃ぐらいだ。
 一たび弾薬が尽きれば、白刃を噛み、肉弾をうつ、白兵戦となるのは必至。
自分たちはピストルの一つはおろか、短剣すら持っていない。
 このまま、大部隊と遭遇すれば、全滅ではないか。 
赤軍大尉は大いに怖れた。
「これからどうする」
彼の不意の問いに対して、マサキはそれに答えて、
「俺には、お迎えが来るのさ」
「ほう……誰だ、知り合いか」
マサキは、何を答えるのも明晰で、妙に怖れたりするふうなど少しもなかった。
「俺の人形(おんな)さ……」
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