第三部 1979年
孤独な戦い
匪賊狩り その4
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ッシャーという瓶ビールが数本入っていた。
「こんなもの、受け取れませぬ」
「インドの坊主は乞食が仕事だろ!ありがたく受け取っておけ」
先生は、禁欲中のヒンズー教のお坊さんに酒とたばこを渡すのか……
相変わらず、破天荒な人だ。
白銀は、そう思いながら、マサキと共に先を急いだ。
遠くの空から、エンジンの轟音が聞こえ始めてきた。
それと共に、市中に空襲警報の音が鳴り響く。
寺院内にいる警備兵たちは、途端に狼狽し始めた。
武装したマサキたちの事はどうでもよく、彼らは逃げ惑った。
走りながら、マサキは自動小銃の安全装置を解除した。
何時でも打てるように言う準備だったが、それより早く白銀は警備兵を捕まえて、物陰に引きずり込んだ。
白銀は無言のまま、軍刀の柄に手をかけ、さっと抜くなり、刃を捕まえた男の目のまえに突き出した。
「白人の二人組の部屋は……」
「一番奥の右側」
鈍く光る白刃を首へまわして、
「鍵は……」
警備兵は、やむなく、肌深く持っていた鍵束を差し出してしまった。
すると、白銀は、左手で、さっと奪り上げて、男の腹に、刀の柄で一撃を叩き込んだ。
彼らは混乱する警備の目をかいくぐりながら、部屋の前にたどり着いた。
鍵を外し、ドアを開けると、ベットの上に腰かける二人の男女が目の前に現れた。
赤軍大尉とラトロワは、若干疲労の色は見えるが、衰弱した様子はなかった。
白銀は、さっと刀を構えて、外から入ってくる敵を警戒した。
「出ろ!ロシア人」
「貴様たちは!」
「テロリストどもに処刑されたいか!早くしろ」
マサキは、鍵束をラトロワに放り投げた。
彼女は赤軍大尉の両手にはめられた手錠を外すと、彼に自分の手錠の鍵を外してもらう。
「よし、もたもたするな」
「お前たちは……」
マサキは、うろたえるソ連兵を背後に、M16小銃の安全装置を装着しながら、銃を構える。
「余計な質問はするな。お前たちに危害は加えんッ、それとも敵に見つかって死にたいか!」
「わかった……」
マサキ達の説得に、ソ連兵たちは、納得した様子だった。
「俺は、木原マサキ」
「白銀影行」
そういうと、二人の手を引いて、牢屋から脱出する。
空襲警報で混乱する、寺院の大伽藍に躍り出る。
途中で敵兵との遭遇戦を切り抜けながら、一気に駆け抜けた。
「車取ってきます」
「へま、するなよ」
白銀は、マサキに見向きもせず、立ち去った。
マサキはしきりに、その後ろ姿にまで眼をつけていた。
無言のまま、マサキは、男女一組のソ連兵を連れて、大廊下へ流れ出した。
戛々とした軍靴のひびきと3名の足音が一つになる。
長い廊下や階段を幾つも上り降りした。
眼を塞がれるような闇も歩かせられた
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