第三部 1979年
孤独な戦い
匪賊狩り その4
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態度から、そう感じるのであった。
「フォフォフォ、これで目的は達した」
差された腹を抑えながら、笑い止まないのである。
むっとしてマサキが、
「どういう事だ?」
かというと、その男は、なお笑って、
「知れたこと。お前は偽物に引っかかったのだ」
「偽物だと!」
男は、それに答えていう。
「今頃、本物のマイクは、センチュリーハウスのMI6本部に逃げ帰っているであろうよ」
この当時のMI6は、今日の様に、テムズ川の川沿いのヴォクソール交差点にある新庁舎ではなく、 ランべスにあるセンチュリーハウスという庁舎に本部を構えていた。
「地獄で待っているぜ!」
そう言い残すと、男は懐中に隠したベビー・ブローニング拳銃を取り出す。
マサキが止める間もなく、25口径のピストルで頭を打ち抜いた。
勝ち誇ったように笑みを湛えて、この世から別れ去ったのである。
呆然とするマサキをよそに、白銀はどこからか持ち出したガソリンをかける。
脱出するついでに、基地を燃やすことにしたのだ。
戦い疲れて、棒のように立つマサキの気持ちもわからないでもない。
だが、白銀には時間が気になった。
ここで2時間もぐずぐずしていたら、爆撃隊が来るからだ。
「博士、夜明けまで時間がありません。
インド空軍の爆撃隊が来ます!
ラトロワさんたちを救いに行きましょう」
「ああ……」
マサキの返事を聞くや否や、白銀はマッチに火をつけた。
火種を投げ込むと同時に、マサキと共にその場を後にした。
基地を脱出した後、マサキたちは捕虜が収容されているナッルール寺院の門前に来ていた。
途中、手に入れた赤いヒンズー教の袈裟を、軍服と装備の上から被り、杖を突いていた。
警備兵の目をかいくぐって、寺院の内部に潜り込んだ。
何もない堂の真ん中に、樹の前に腰かけている骨と皮ばかりな老僧がいた。
しかし老僧は眠っているのか、死んでいるのか、空虚な眼をこちらへ向けたまま、答えもしない。
「おい、坊主」
マサキは、M16の銃床で、老僧の脛をなぐった。
老僧は、やっとにぶい眼をあいて、眼の前にいるマサキと、閃めく軍刀を持つ白銀を見まわした。
「和上、我々の願いを聞いてくれますか」
白銀は、老僧に優しい英語で丁寧に、これまでの経緯とここに来た理由を教えた。
誘拐されたソ連人の特徴を説明し、彼らの居場所を聞いた。
「わしは何度か、白人の連中を見ておりますが、寺院の奥の部屋におるとしか……」
赤い頭巾をかぶったマサキは、タバコをふかしながら、僧侶に感謝の意を示した。
「俺からのお布施だ、受け取ってくれ」
マサキは、ヒンズー教の僧侶にお礼として、首から下げていた頭陀袋を渡した。
中には、ビディーというインド製のタバコとキングフィ
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