暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第三部 1979年
孤独な戦い
匪賊狩り その4
[2/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
を標的に絞った」

「イーラムの虎を支援しているのが、協力者(現地人工作員)を通じて英国人ということは噂の域を出なかった。
ソ連人を捕虜にして、ジャフナ市内のどこかに潜んでいるというのも分かった。
だが、その存在をつかむ手がかりはない。
そこでソ連軍とインド軍を使って、アンタらをいぶりだしたわけさ」

「これが俺の作戦さ。
もうアンタは籠の鳥だ。俺のために死ね!」
首領は、体のふるえを堪えながら、努めて冷笑して見せようとした。
「フハハハハ、籠の鳥は、お前ではないか、木原よ。
ハハハハハ、何ができるというのだ、ハハハハハ」
 今度は、首領からいった。
マサキは、笑みをつつみながら、反論した。
「俺は、この基地を爆破できる」
「何ッ」
「警備兵が、基地の外に出払っている間に、俺の仲間の忍者が爆弾を仕掛けたのさ。
それにもうじき俺の人形(おんな)が、この基地もろとも核ミサイルで攻撃する手はずを取っている」
シーンとした闇の中で、マサキのはっきりとした声が、皆の耳朶(じだ)を打った。
「お前が、戦争ごっこのために集めた秘密資金や有価証券、金銀財宝……
全てが、灰になり果てるのだ!」
マサキは、傲岸(ごうがん)な微笑を含んで、その人々を見下しながら、
「聞けぃ、木っ端ども!
もうすぐ、この男は破産して、『イーラムの虎』は無一文になる。
お前たちには1ドル、いや1セントも支払いですることが出来なくなるであろう」
(1979年のドル円レート、1ドル= 239円)
 答えは、唇の端に(ゆが)めた微笑をもってした。
低い一声、静かな呼吸の一つも、もういたずらに費やすことはできないものになっている。
 銃を握って佇んでいた護衛たちの顔は、途端にさっと蒼ざめた。
いかに勇猛な者どもも、こうした破綻を目の前に立つと、日頃の顔色もない。
「待ってくれッ、よし、分かった。
と、取引をしようじゃないか、木原博士」
 マサキがいったために、首領は急に動顛したのであろうか。
ふいに横からいった。
「あんたらの本当の狙いが、英国のMI6というのならば、私がその全容を明らかにしよう。
それでどうだッ、ソ連兵の誘拐の件からも手を引こう!」
 その瞬間、プラバカランは、後ろに立つ白人傭兵に脳天を狙撃された。
首領の影が、ただ一発の弾音に、地上へころげ落ちると共に、タミル人戦闘員たちは、もとの道へ散っていった。
 後に残ったのは、ワイルドギースの傭兵メンバーと、そのリーダーのみだった。
リーダーのマッドマイクは、談笑でもしている様に、こんな露骨な言い分をも、さも気軽(きがる)げに口にした。
「フォッフォフォ、結構、結構。
さすがはゼオライマーのパイロットだけは、あるな」
 白人の男は、自動拳銃をホルスターにしまうと
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ