第三部 1979年
孤独な戦い
匪賊狩り その3
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ろで、スロットルをアイドルに前進させ、燃料をエンジンに送り込み、ノズルから豪快に炎が出た。
跳躍ユニットから甲高いジェットの排気音を立てながら、滑走路を突っ切っていく。
複座に改造されたF−4ファントムは、高度100メートルの匍匐飛行で、スリランカ北部に接近した。
迎撃してきた敵の戦術機・サーブ35を認めると、WS-16A突撃砲で応戦する。
「博士、脱出準備をして下さいッ、飛び出しますッ」
その声を聴いたマサキは、意外だという顔だった。
国籍表示のない深緑の三機編隊による追撃を受けて、自動操縦に切り替えようとしたところであった。
「バカな、F‐5の偽物など、訳なく撃墜して見せるさ」
マサキには、勝つ自信があった。
簡易版とはいえ、運転支援システムとして、人工知能を搭載しており、操縦が簡素化していた。
素人でも乗れるようにと、自動変速機付の乗用車並みの操作性を実現。
一度離陸さえすれば、フットペダルとスロットルで目的地まで難なく行けるように改造されていた。
「誰が、脱出するものか!」
その時、サバイバルベストに装着していたM10リボルバーを取り出す。
計器に向けて、一斉に射撃を始めた。
「わァ、何をする!」
マサキは座席にあるシートベルトを締め、操縦桿を引き、機体を水平の位置に持って行く。
機体が水平であればあるほど、低高度での脱出が有利になるからだ。
左手側にあるコンソールパネルを開けると、その中にある脱出装置のボタンを強打した。
その瞬間、被っていた機密兜ごと頭部全体が固定された。
頭部全体が固定されたのは、衛士を強力なGから守るためである。
戦術機が登場する前のジェット戦闘機まで、操縦士が被っていたのは単純なヘルメットであった。
だが戦術機では、ヘルメット自体が頭部装着投影機となり、形状の複雑化や重量増に繋がった。
その為、従来のヘルメットよりも射出される際に、頭部や首、頚椎への負担が大きくなる。
その事から、射出時に座席が強制的に衛士の頭部を固定するというシステムが採用された。
また頭部のみならず、新規開発されたロケットモーターや姿勢制御の高精度化により、負傷の危険性も低減された。
その進化は、BETA戦争での戦訓によるところが大きい。
「脱出して生き残れればよい」ものから、「脱出しても戦線復帰できる」ものが求められた為である。
背面にある完成ユニット脱出用のカバーが、内部にある爆薬で吹き飛ばされる。
ロケットモーターが点火し、管制ユニットがモジュールごと空中に射出された。
間もなく、内蔵されている落下傘が自動展開すると、地表に向かってゆっくり降下していった。
「馬鹿野郎!」
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