第二章
15.鎧の剣士、そして
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よね?」
えっ? と、今度はシェーラだけでなくヒースもフォルを見た。
さすがに二人の手の力は緩んだが、鎧の剣士のほうはさらに緩んだようだった。結果的にアークデーモンとバーサーカーの二人の力が勝り、鎧の剣士を押し返し、ふたたび距離を取ることに成功した。
「なるほど。そういうことだったんだ」
そのとき、新たな声が聞こえた。
三人は、声に、そして声の主の存在に驚愕した。この場にもう一人いたことに、まったく気づいていなかったからだ。
気配を消していたのだろうか。マントに身を包み、細身の剣を持った人間が、いつのまにか鎧の剣士から離れたところに立っていた。フードを深くかぶっているが、茶色がかった金髪がわずかにのぞいている。
「剣士さん。もういいんじゃないですか。神託……神との約束は、ハーゴンとシドーの死をもって、もう果たしたんじゃないでしょうか。このあとのことは、また新しい世界の話なんだと思います。だから――」
現れたその人間の声は、若かった。男声だがやや高めで、心地よいわずかな掠れがあり、穏やかだった。
「あとはもう、この世の人たちに任せて、ゆっくり休んでください」
すると、剣士の全身を覆う重厚な鎧から、穏やかな、しかしはっきりと見える白いモヤが漏れるように出た。
そしてそのモヤが、上へと消えていく。
すると、まず兜が外れ、石の床に乾いた音を立てて落ちた。
「……!」
転がる兜から見えた中身は……完全に白骨化した頭部だった。
続いて全身の防具が次々と落ちていく。やはりすべてから白骨が覗いていた。
「もう死んでおったのか。気づかなんだ」
「オレも全然気づかなかったな」
驚く二人。
深くフードをかぶったマント姿の男は驚きと感嘆を口にした。
「よく気づいたなあ。前に会ったときは間違いなく生身だったと思うんだけど……。責任感があまりに強すぎて、死んでからも使命を果たそうとしてたんだろうね」
男は言い終わると、崩れ去った鎧の剣士に対し、ゆっくりと、深く頭を下げた。
フォルも、同じように頭を下げていた。
「おいフォル、お前もその鎧野郎に頭下げるのはちょっと違うんじゃないか……」
「あ、ごめんなさい。そちらの旅のおかたへのお礼が先ですよね」
バーサーカーの少女の指摘に、慌てて頭を下げ直した。
「あなたのお言葉でハッとしました。よく考えたら、私の提案だといつまでもこの鎧のおかたが天国に行けなかったと思います。あなたのお言葉のおかげで、このおかたは救われたと思います。ありがとうございました」
「いや、亡くなった人の魂が残り続けるのはどうなのかなと思っただけだよ。この剣士さんとは一度しか会ったことがないから、僕も正解がなんなの
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