第三章
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「昔よりはあっても」
「やっぱりないのね」
「そうしたチームだからね」
だからだというのだ。
「あの人お金かかるけれど」
「そのお金がないから」
「うちには来ないわ」
「そうなのね」
「ええ、だから巨人に行かないなら」
そうであるならというのだ。
「それでね」
「いいのね」
「何も問題ないわ」
こうしたことを言うのだった。
千佳はバウアーについては特に何も思わなかった、だが。
学校から帰ってふと彼がどうなるか具体的に巨人に行ってしまいやしないかと心配になってだった。
中学三年生の兄の寿が家に帰ると彼に尋ねた。
「バウアーさんか」
「ええ、巨人に行かないかしら」
「それはないみたいだな」
兄は妹に答えた。
「どうもあそこ遂にブランドが落ちたんだ」
「悪いことばかりしてきて」
「しかも弱くなってな」
実にいいことにだ。
「他のチームも人気出て来て」
「そうなって」
「球界の盟主なんてな」
かなりの部分自称であった、さながら北朝鮮が自分達を地上の楽園と吹聴するものであろう。巨人は球界の北朝鮮であるのだ。
「もう過去だしな」
「それはね」
千佳も確かにと頷いた。
「親会社も今は」
「弱まってるしな」
「マスコミがそうなのよね」
「あの業界全体がな」
「そうなっていて」
「それでな」
そのこともあってというのだ。
「巨人は弱まってるんだ」
「お金についても」
「ああ、だからバウアーさん獲得はな」
「したくても出来ないのね」
「そうみたいだな」
「補強出来ない巨人なんてね」
これまで他チームから選手を掠め取ることだけを考え育成なぞ何一つ考えてこなかったチームはというのだ。
「もうね」
「何でもないな」
「カスとしかね」
それこそというのだ。
「思えないわ」
「そうだよな」
「その巨人はないのね」
「ああ、ほぼ確実にな」
「そうなのね」
「それでオリックスかって話もあったけれどな」
兄の言葉は既に過去形になっていた、そこで千佳もわかっていった。
「あった、ね」
「察しがいいな、相変わらず」
「わかるわよ、これ位」
千佳はきっぱりとした口調で答えた。
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