第百十八話 戸籍謄本その九
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「そうよ、貴族の人でも犯罪者だったら」
「駄目ね」
「そうでしょ」
逆にというのだ。
「これまでお話した通りに」
「その通りだけれどね」
「世の中そうはいかないのね」
「お母さんも何度も言うけれど」
「気にする人いるのね」
「偏見でね」
「じゃあ自分が差別されたらどうなんだよ」
明男は忌々し気に言った。
「差別されたらな」
「されていい思いしないわよね」
「そうだろ」
姉にも返した。
「生まれがどうとかで付き合うなとかな」
「結婚しちゃ駄目とかね」
「そんなこと言われたらな」
それこそというのだ。
「最悪だよ」
「そうよね」
「絶対に嫌だよ」
「好きになったらね」
「それも相思相愛ならな」
「生まれとか関係なくね」
「実は人間的にやばいとかじゃなかったらな」
それならというのだ。
「いいだろ」
「そうよね、絶対に」
「姉ちゃん若しだよ」
明男は姉を見据えて問うた。
「成海さんが生まれがどうとかで付き合うなって言われたら」
「はいそうですかってなるか?」
「ならないよな」
「なる筈ないでしょ」
弟にむっとした顔になって答えた。
「絶対に」
「そうだよな」
「成海っちがどうでもね」
「成海さんは成海さんだよな」
「そうでしょ、今お話に出た被差別部落とかお妾さんの子供さんとか」
「そうしたことはな」
「成海っちがどうかってね」
彼の人間性に関係あるかというのだ。
「ならないでしょ」
「そうだよ、そう言う俺達だってな」
「どうあってもね」
「どんな生まれでもな」
「私達は私達だから」
そうだからだというのだ。
「変わらないわよ」
「本当にな」
「あの、成海っちが入れ墨入れて」
仮に例えて話した。
「半グレみたいな格好になって」
「実際に半グレになったらな」
「凄く嫌だけれど」
ただし交際を諦めるとは言わなかった、これは例えであって成海が実際にそうした人間になるとは思っていないからだ。
「けれどね」
「それでもだよな」
「成海っちがどんな生まれでも」
「本当に成海さんは成海さんだからな」
「変わらないわよ」
「そうよ、あの子いい子だから」
母も言ってきた、娘の交際を知っての言葉だ。
「だからね」
「付き合ってもいいのよね」
「いいわよ」
一言で言い切った。
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