第百十八話 戸籍謄本その八
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「やっていくんだ」
「これからも」
「こうした考えていくことか」
「そうだ、しかしな」
それでもとだ、父は溜息混じりに言った。
「二人みたいな考えの人がもっと増えるとな」
「いいわね」
母は夫の言葉に頷いた。
「本当に」
「全くだな」
「いや、普通の考えでしょ」
かな恵は食べつつ言った。
「生まれとかよりもいいことしてるか」
「悪いことしてるかよね」
「私の周りはね」
一華達も成海達もというのだ。
「皆大体ね」
「そうした考えね」
「一華ちゃん達もそうで」
実際に彼女の名前を出して話した。
「それで成海っちもでクラスでも部活でも」
「皆そうよね」
「白人でも黒人でも活躍してくれたら」
今度は人種の話をした。
「いい助っ人でしょ」
「そうよね」
「阪神でもね」
「それはその通りね」
母もその通りだと答えた。
「本当に」
「バースさんもいい助っ人だったけれど」
「伝説よね」
「あの人が若し黒人でもね」
「あれだけ打ったらね」
人種に関係なくというのだ。
「凄いでしょ」
「ええ」
娘のその言葉に頷いた。
「それでね」
「そうでしょ?だからね」
それでというのだ。
「私から見ればね」
「バースさんはいい助っ人ね」
「黒人でもね」
「そうよね」
「逆に」
かな恵はこうも言った。
「一割五分も打たなかったら」
「誰でも駄目っていうのね」
「それでホームランもなかったら」
それならというのだ。
「誰でもよ」
「いらないわね」
「もっと言えば日本人でもね」
助っ人でなくともというのだ。
「それで被差別部落の人でも片親の家庭でもお妾さんのお母さんでも」
「いいのね」
「打ってくれるか投げてくれて」
そうして活躍すればというのだ。
「もっと言えばそれで性格がよかったら」
「いいのね」
「何が問題なのよ」
「阪神で活躍してくれたら」
「もうそれでね」
まさにというのだ。
「問題なしでしょ」
「そうした考えね」
「私はね」
あくまでというのだ。
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