第七十九話 残さないことその十七
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「まず教科書に出て来るわね」
「芥川龍之介もそうですね」
「それで何があったの?」
「僕が太宰って自殺したんだよなって言ったら」
その時はというのです。
「真面目な顔で太宰は自殺マニアだろって言ってきたんです」
「そんなことがあったの」
「はい、他にも」
新一君は私の倍以上の勢いでカレーを食べつつ言います。
「あったんです」
「まだあったの」
「僕がドンキホーテの話をしまして」
「あのお爺さんのお話ね」
「自分を騎士と思い込んだ」
「有名なお話よね」
「あのお話のことを話したら」
その時はというのです。
「真面目な顔で悲しいお話なんだって言われました」
「そこでも真面目だったの」
「普段いつも笑ってる様な奴が」
それでもというのです。
「真面目になるんですよ」
「文学の話の時は」
「この前帰りのバスで別の同級生に会っても」
その時もというのです。
「その時僕島崎藤村の詩集読んでまして」
「詩集も読むの」
「ちらっと」
「それでも読むのね」
何か新一君の教養を感じました。
「結構なことね」
「そうでしょうか」
「私あまり文学読まないから」
もっと言えば読書自体することが少ないです。
「進一君は凄いわね」
「凄くないですよ、本は好きなだけです」
新一君はそこはあっさりと言いました
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