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木の葉詰め合わせ
本編番外編
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此処ではない他の世界で・伍
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に言葉にならない悲鳴が上がり、痛みから気を逸らすべくぼろぼろと涙が零れ落ちていく。
 耐えられない、堪え難い痛みというものが確かにこの世には存在するのだと悟った。

 チャクラのコントロールが狂い、ほぼ強制的にそれまで同化していた岩壁から弾き出される。
 ――ぶわり、と生暖かい空気が頬に触れた事で、洞窟内に逆戻りしたと察する。
 ああもう、コンチクショウ。こんな機能まで有ったなんて――完全にしてやられた。

「……手間をかけさせるな、小娘」
「こ、の野郎……!」

 地面に転がって痛みを堪えている私を冷徹な眼差しで見下ろすのは、他ならない誘拐犯の男だ。
 揺れる炎をそのまま映し取った様な赤い瞳が、暗い洞窟内で炯々とした輝きを放っている。

 先程私を襲った激痛は既にない。
 けれども痛みの余韻は私の体に残り、弛緩した体は常の張りを直ぐさま取り戻しそうにない――ああ、してやられた。

「けったいな機能を仕込みやがって、趣味が悪いぞ」
「仇のいうことを馬鹿正直に信じる方が可笑しい。無様だな」

 黒い手袋を付けた片手が私の方へと伸ばされる。
 そのまま襟首を掴まれ、無理矢理経立たされ、引き摺られる様にして奥へと進む。

「話の続きをしようか。この遺跡は先にも教えた様に、千手とうちは――つまりオレ達の始祖に当たる六道仙人縁の……そうだな、霊地とでもしておこうか」

 淡々としながらも、どこか熱の篭った声音が耳へと流れ込んで来る。

「……この地で仙人は十尾の力を手に入れ、その力を九つに分けた。それらを元に生まれたのが、今で言う尾獣達だ」

 遠目に見えた、萎びて枯れ切った大樹の姿が闇から浮かび上がる。
 男の足取りに迷いは無い。もう既に何度かこの地を訪れた事があるのかもしれない。

「仙人亡き後、この地は人間が足を踏み入れる事を許さない特別な場所となった。仙人の直系である両一族の者達とて、この場についての詳細を知るまい」
「そうかい。そんな所に連れてきてもらえるなんて、光栄だね」

 木はもう目の前だ。やっと男の足取りが止まった。
 空気の流れで、男がこの枯れた木の上から下までをあの赤い目で眺めたのだと分かった。

「お前が気付いたかどうかは分からんが、この木は本来自然界には存在しない。これもまた仙人の遺産だと言ってもいい」
「……枯れているから、意味が無いんじゃないか」

 至近距離から見ても、この木の寿命が既に果たされたのだと分かる。
 今此処にあるのはただの亡骸。
 いくら伝説の仙人のものであったとしても、役目を果たして死んでしまっている以上、何の役にも……。

「――――だから、貴様を連れてきた」

 耳元で囁かれた静かな声音に、慄然する。
 襟首を掴んでいた手は
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