本編番外編
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此処ではない他の世界で・伍
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かつて世界を救った――と聞いて思いつくのはただ一人。
紫の波紋を描いた両眼を持ち、尾獣を生み出し、戦乱に喘ぐ人々を導いたとされる伝説の仙人“六道仙人”しかいない。
で、奇妙奇天烈といってもいい前世の記憶があるにしても、私は曲り形にも千手の血統だ――しかも、かなり直系に近い。
で、この誘拐犯は三つ巴紋の浮かんでいる赤い目を持っている事から、うちは一族の誰かに違いない。
…………この状況、かなりやばくね?
ビリビリと張りつめた空気に冷や汗が背を伝う。不味い、不味すぎる。
どこをどうとっても詰みだ、この状況。あわわわ。
――一か八か、もうやるしか無い。
じりじりと後退しつつ、印を組む。この暗闇で、誘拐犯の視界もあまりよく見えていない事を祈ろう――無駄とは思うけど。
「――――木遁・樹海降誕!」
攻撃と、目くらましも兼ねて大量の木々をこの洞窟内に生み出す。
このまま真っ直ぐ出口らしき方へと向かうのは得策ではない。男の方も今の私の実力では自分を倒すには不足していると知っている――十中八九、私の先程の樹海降誕が目くらましであり、逃走のための手段だと気付いている。
馬鹿正直に出口に向けて走るのは得策ではない。
「――多重、木遁分身の術!!」
細胞の一部を切り取って、木遁ベースの分身達を十名程生み出す。
『うわぁっ!』
『きゃあ!』
くっそ、もう二体やられた! 手が早いにも限度ってものがあってだな、あの誘拐犯!
陽動攻撃用の分身がやられたのに気付いて、内心で舌打ちする。
残る分身は後八体。内三体をバラバラの方へと逃がして、四体は出口の方へ。
最後の一体は水遁で霧を発生させ、出来るだけ見つからない様に洞窟の奥へと駆ける。
『――っつ、ぁあ!』
『〜〜ぐぅ!!』
適当な方向へ走っていた二体が悲鳴を上げて消える。どんだけだ、あの野郎!
胸中でののしりの言葉を上げて、適当な岩壁へと身を寄せる。軽く材質を叩いて確認し、問題が無いと分かって印を組む。
ひんやりとする岩壁に触れていた、私の手が――ずぼりと飲み込まれる。
よし、土遁の術でこのまま地中を通ってこの場から離脱しよう。
兎に角、これ以上この誘拐犯とこの場で同席していたくない。
囮の木遁分身が男の気を引き付けている事に感謝して、そのまま全身を岩の中へと滑り込ませる。土遁って地味な印象が強くて余り人気がないけど、凄く役に立つ術なんだよね。
そのまま、走り去ろうとした瞬間。
――――右手首から、言語に尽くし難い激痛が全身を駆け巡った。
「――〜〜〜〜っつ、ぁああ!!」
雷に打たれた様な、とはこの様な状態を指すのだろうか。
あまりの痛み
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