暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/WizarDragonknight
結梨
[5/5]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話

 可奈美は手にしたお盆に乗せた料理を、最奥の響から置いていく。

「友奈ちゃんはウサギさんうどんだよね」
「うどん! やっぱりこれだよね!」
「で、真司さんはウサギステーキだよね」
「おおっ! これこれ! ……ウサギさんステーキってメニューだけどホントにウサギなのかこれ?」
「違うけど、細かいことは企業秘密だよ」

 可奈美は悪戯ぽく微笑み、えりかと結梨の前にコップを置いた。

「はい、えりかちゃんと結梨ちゃんには私からサービスだよ。紅茶どうぞ」
「あ、はい。ありがとうございます。衛藤さん」
「ありがとう!」

 結梨は両手でコップを手にし、「フーフー」と息を吐きかける。ゆっくりと口にし、「温かい……」と安心したように言った。

「すみません! 注文お願いします!」
「はいただいま! それじゃ皆、また後で!」

 可奈美はまた忙しなく、他の座席へ注文を取りに行く。
 入れ替わりでやって来たチノが、盆に乗せて今度はハルトたちの料理を持ってきた。
 ガッツリとしたかつ丼を注文したコウスケ、カレーを頼んだえりかと結梨。一方ハルトに置かれたのは、簡単な豚汁だった。

「ハルトさん、それだけでいいんですか?」
「ああ。平気だよ。あんまりお腹空いてないから」

 ハルトはそう答えて、豚汁を啜る。
 やはり、味は感じない。それに伴い、美味しいという感覚を分け合う皆が、少し遠くに感じてしまう。

「お兄ちゃん?」

 突如、隣の結梨が丸い目でこちらを見上げてきた。

「どうしたの?」
「どうしたのって、何が?」

 手慣れた平静を装う顔。
 十年以上、怪物であることを隠して人間として生きてきたハルトにとって、これで誤魔化しが利かなかったものなど、そうそういない。
 だが。

「お兄ちゃん、ちょっとだけ寂しそうだから」

 その時。
 ハルト、真司、コウスケ、響、友奈。
 ハルトの正体を知る者たち(ファントム・ドラゴン)の間に、沈黙が走った。
 それは、ココアが再び結梨を妹にしようとしにくるまで続いた。

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ