結梨
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には普通に旨い店も多い……ぜ?」
「どしたの?」
そこまで言いかけたコウスケが、ハルトの顔を見て申し訳なさそうに顔をそむけた。
「悪い。お前への配慮が足りなかった……」
「……気にしないでよ。俺自身は今までずっとこうだったんだからさ。むしろ、変に気を使われる方が嫌だよ」
「ああ……」
コウスケが身を固めながら頷いた。
まあ、仕方ないよな、とはハルト自身も思う。
ファントムであるこの肉体。味覚がなく、誰かが幸せだと感じる気持ちを共感することができない。一緒に食べた「美味しい」という感覚をハルトが知ることは、これまでも、そしてこれからも永劫ない。
だが、ハルトはそんなことは気にせずに、結梨の前に屈んだ。
「それじゃあ、俺たちがいるお店に来る?」
「お店?」
結梨が首を傾げた。
「そうそう。俺の友達も一杯いるから、結梨ちゃんも楽しいと思うよ」
「ラビットハウスか……確かに困ったときはあそこがいいかもな」
コウスケが同意した。
「木組みの街だったら、電車で三十分もかからねえよな」
「そうだね。えりかちゃんもこの前来てくれてたし」
「はい。行きましょう!」
えりかの同意も得られて、ハルトは改めて、これから四人で向かう旨を可奈美へ送信したのだった。
「結梨ちゃんいらっしゃい!」
ラビットハウスの扉を開けた途端、ココアの明るい声が真っ先に出迎えた。
明るい表情のまま、彼女はえりかと手を繋いでいる結梨のもとへ抱き着いてきた。
「初めまして! 私、保登心愛! お姉ちゃんって呼んでね!」
「結梨です。お願いします、お姉ちゃん」
「わ、わわわ……!」
素直な反応に、ココアの体が震えている。その腕が何度か空を泳ぎ、ハルトの袖を掴んだ。
「ハルトさんハルトさん、何この子……? すっごい可愛い……!」
「前話した、大学教授の娘さん。さっき自分で名前覚えてたじゃん」
「そうだけど……すっごく可愛い!」
語彙力を失ったココアが、両手を広げて結梨へ飛び掛かる。
だが、その身代わりとなったのは、結梨をその身に引き寄せたえりかだった。
「きゃああっ!」
「お? えりかちゃん! えりかちゃんモフモフ……」
「ほ、保登さん……!」
標的が入れ替わったことに一瞬だけ驚いたココアだが、そのままえりかへ頬ずりを始めた。えりかは困った表情を見せながら、決して突き飛ばすことはしない。
放っておいてもいいかと判断したハルトは、次にやってきた可奈美へ向き合う。
「お待たせ可奈美ちゃん。四人席なんだけど、空いてるかな?」
「ううん。ごめんねハルトさん。今日いつもよりも繁盛してて、空いてないんだよね」
確かにと、ハ
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