第一章
[2]次話
それ位の額なら楽勝
バウアーの去就はどうなるのか、日本の野球ファン達の中にはこのことが気掛かりで仕方ない者もいる。
石川小百合、横浜で生まれ育ち根っからの横浜ファンである彼女もそうである。波がかった黒髪は腰までありきりっとした切れ長の目と細長い眉に形のいいすっきりとした頬と顎を持ち唇は赤く小さい。耳は大きく背は一六九程で膝までのタイトスカートがよく似合っている。職業は証券会社勤務である。
その彼女がだ、昼食の時同期にぼやいた、そのぼやきこそそれであった。
「もううちはね」
「バウアーさんいない前提で動いてるわね」
「それが明らかよね」
「あれだけ助っ人獲得したらね」
「正直言ってね」
昼食のスパゲティ、ボロネーゼを食べつつ言うのだった。
「あの人色々ね」
「言われてるわね」
「ええ、この前もね」
「アメリカ軍の人のことで言ったわね」
「エックスでね、けれど根っこはね」
バウアーの人格についてもだ。小百合は話した。
「真面目で思いやりのある」
「そうした人よね」
「そうよ、誤解されやすい人なのよ」
「そうよね、それで戦力としては」
「折り紙付きよ」
小百合は言い切った。
「伊達にサイ=ヤング賞じゃないわ、ただね」
「お金の問題よね」
「三十億よ」
日本円に換算してというのだ。
「これだけ出すってね」
「無理よね」
「あの巨人でもね」
全人類普遍の敵にして東京から邪悪を全世界に撒き散らさんと常に画策しているこのチームはというのだ。
「手を引いてるみたいだし」
「あそこ最近お金ないみたいね」
「ええ、三十億なんてね」
「出せないわね」
「そこが一番の問題よね」
「だから横浜としては」
「残念だけれどね」
ペペロンチーノを食べている友人に話した、そしてだった。
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