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神々の塔
第五十八話 見えてきたものその一

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                第五十八話  見えてきたもの
 塔を登っていってだ、羅はこんなことを言った。今一行が進んでいるのは東アジアのそれを思わせる山道だ。
「半分以上踏破したが」
「もう六割はいったわよ」
 アレンカールは周囲を警戒しつつ答えた。
「塔全体のね」
「そやな」
「あと四割だから」
「終わりに向かってるな」
「そのことが実感出来てきたわね」
「ああ」
 その通りだとだ、羅は答えた。
「そうなってきたわ」
「あたいもよ、最初はね」
「果たして踏破出来るかな」
「もう考えなかったわ」
「そやったんか」
「考えたらね」
 そうすればというのだ。
「あまりにも果てがなくて」
「何万階ってなるとな」
「そやからね」
「踏破出来るかどうかはか」
「考えなかったわ」
 そうだったというのだ。
「最初はね」
「そやってんな」
「けどね」
 それでもというのだった。
「今はね」
「考えてるか」
「半分越えた辺りから」
 踏破した階数をというのだ。
「次第にだけれどね」
「踏破出来るってか」
「そうよ、最初はね」
「どうしてもやな」
「考えるとね」
「嫌になるな」
「そうなりそうやったら」
 それならというのだ。
「考えない様にしてるのよ」
「そういうことやねんな」
「あたいはね」
「まあ考えてどうにかなるんやったらな」
 メルヴィルはそれならと話した。
「頂上まで一気に行けるとかな」
「それやったらやな」
「考えてもええが」
「一階一階進むしかないなら」
「それやとな」
 それこそというのだ。
「もうな」
「考えないのも手でしょ」
「あとどれだけあるとかな」
「それが途方もないものならね」
「考えへんでか」
「ただね」
 ひたすらというのだ。
「先に進んで」
「そしてやな」
「先に進むのもええでしょ」
「そやな」
 メルヴィルはアレンカールのその言葉に頷いた。
「遥かな先なんて考えたら気が滅入るわ」
「何しろ何万階や」 
 その階数をだ、トウェインは言った。
「それやとな」
「最初それだけって考えていくとな」
「まだどれだけあるか」
「あかんわってなるな」
「そうした考えにもなるわ、アレンカールの考えもな」 
「正しいな」
「少なくとも間違いやない」
 こうメルヴィルに話した。
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