第百十八話 戸籍謄本その五
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「お妾さんのお子さんでもね」
「何でもないわね」
「だから何よ」
その生まれがというのだ。
「本当にね」
「そう思うことはいいことでも」
「そう思わない人もいるの」
「今だに士族出身かとかね」
「言う人いるの」
「いたみたいよ、昔はね」
「士族っていっても」
「何でもないわね」
「四民平等でしょ」
明治からとだ、かな恵は言った。
「それにお侍っていいことしたらなれたのよね」
「取り立てられてね」
「あと養子に入ったりして」
「伊藤博文さんもよ」
初代総理大臣であり日本に多大な功績を残した人物である、その人柄は楽天家で気さくで飾らず剽軽であったという。
「元々農民でしょ」
「お父さんが養子に入って武士になったのよね」
「そうだったのよ」
「そうよね、別にね」
「何でもないわね」
「うちの学校欧州の貴族のお家の人いるし」
「あそこはそんな人もいるわね」
母はまたそれはと返した。
「色々な人が集まるから」
「何か三年生の普通科のドイツのヘッセ先輩は」
彼はというと。
「かつてかなり領地持っていた大貴族だったとか」
「爵位もあったのね」
「そう聞いてるわ、西の方の」
ドイツのというのだ。
「そうね」
「そんな人もいるわね」
「けれど別にね」
「これといってよね」
「何もないわ」
「だから本当にね」
「生まれとか気にする人いるのね、犯罪者じゃないでしょ」
かな恵は言った。
「別に」
「生まれであってね」
「それじゃあね」
「問題なしって言うのよね」
「あの、被差別部落でもお妾さんの子供さんでも」
かな恵はまとめて言った。
「その人が悪人でないとね」
「いいわね」
「そうでしょ、この前片親がどうとかって」
そうした家庭だからだというのだ。
「差別するってお話ネットで見たけれど」
「かな恵は気にしないわね」
「だからどうなのよ」
「っていうか俺の友達親が離婚してな」
また明男が言った。
「それでな」
「片親なのね」
「お袋さんと二人暮らしだよ」
そうだというのだ。
「けれどな」
「何もないわね」
「いい奴だよ」
その友人はというのだ。
「本当にな」
「だからいいっていうのね」
「俺そいつから悪いことされたことないし」
こうもだ、明男は言った。
「あんないい奴はいないっていう位ね」
「いい子なのね」
「何でも親父さんは飲んだくれて家族に暴力振るう」
そうしたというのだ。
「最低な奴らしいけれどな」
「その子自体はいい子ね」
「っていうかそんな親ならいない方がいいだろ」
こうもだ、明男は言った。
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