第百十八話 戸籍謄本その四
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「昔は普通だったのよ」
「お金や地位があったら」
「お妾さんいてね」
「その間にお子さんもなのね」
「いたのよ」
「そうだったのね」
「それでその人のお父さんもね」
母の知り合いの父もとうのだ。
「そうした人だったの」
「お妾さんのお子さんだったの」
「そうよ」
「あのさ、同じ塾で違う中学の奴が言ってたけどさ」
明男がここでまた言ってきた。
「そいつの中学の先生愛人さんいて」
「それでなの」
「愛人さんに自分の子供妊娠させて」
そうしてというのだ。
「今すげえ揉めてるらしいけどな」
「それでそうした人がいるらしいんだよ」
「どうせあれだろ」
父は侮蔑した様な声で息子に言葉を返した。
「愛人さんといっても無理にな」
「弱味握ってか」
「そうだろ」
「何か教育実習生だった人を隠し撮りしてな」
「それをばら撒くとか脅迫したんだな」
「それで無理に愛人さんにしてな」
「そうなったんだな」
息子の話を聞いて述べた。
「よくある話だ」
「そうなんだな」
「学校の先生はそんなのが多いからな」
「これ犯罪だよな」
「そうだ、どうせその先生人や日本にはあれこれ言ってな」
そうしてというのだ。
「自分はそんなのだ」
「人脅して愛人さんにしてか」
「妊娠させたんだ」
「裁判とかになってるらしいんだよ」
「当然だ、そんな奴は人間の屑だ
父は軽蔑しきった声で言い切った。
「本当にな」
「そう言うしかないよな」
「当たり前だ、しかしな」
それでもと言うのだった。
「戸籍謄本だとそうした出生もな」
「わかるんだな」
「そうだ、若しそこで愛人さんにさせられた人が子供産んでもな」
「そのお子さんのことがか」
「書かれてるんだ」
戸籍謄本にはというのだ。
「若し本人さんに言ってなくてもな」
「そうなんだな」
「だからだ」
「戸籍謄本は滅多に出してくれないんだな」
「本人さんが出して欲しいと言ってもな」
「もうね、お役所にもよるけれど」
また母が話した。
「出して欲しいと幾ら言ってもね」
「そうした事情でなのね」
「本人さんが言っても」
ここでもかな恵に話した。
「抄本でいいですかってね」
「言って出してくれないの」
「そうなのよ、それで生まれの差別がね」
「あるのね」
「あんた達もお母さん達も何でもないことと思っていても」
そうであってもというのだ。
「そうしたことも人それぞれなのよ」
「気にする人いるのね」
「生まれをね」
「あの、別に牛や豚殺してもお仕事でしょ」
かな恵は口をへの字にさせて述べた。
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