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第百十八話 戸籍謄本その三

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「それでね」
「その日とも知らなくてもか」
「戸籍謄本にはね」
「書いてあったんだな」
「その人のお父さんだけ母親が違うことが」
「そうだったんだな」
「その人六人兄弟の長男さんで」
 その立場でというのだ。
「上にお姉さんお二人下に妹さんお一人弟さんお二人だったけれど」
「その人だけはか」
「お妾さんの子供だったの」
「そんなことあるんだな」
「けれど同じお家で同じ人達に育てられて」
 そうであってというのだ。
「兄弟仲もよかったけれどね」
「誰も何も言わなくてか」
「六人兄弟のお母さんも普通に接していたけれど」
「実は、か」
「そうしたこともわかるの、それで昔はね」
 母は真剣な顔で彼に話した。
「お妾さんのお子さんだとね」
「差別されてたんだな」
「キリスト教でもそうでしょ」
「何か昔は愛人さんのお子さんだとな」
 例えば国王と寵妃との間の子供である。
「洗礼がどうとかな」
「言われたりね」
「あれか。私生児ってやつ」
 弟はこの単語をここで出した。
「あれか」
「そうだって言われてね」
「差別されてたんだったな」
「家督もね」
 正妻との間の子供でなければだったのだ、尚李氏朝鮮でもそうだったがこちらは朱子学の考えが変に強かったからだという。
「そうだったのよ」
「成程な」100
「そして」
 そのうえでというのだった。
「何かとね」
「差別されてたんだな」
「日本だとそこまではなかったわ」
「殿様でもお妾さんとの間に生まれても」
「なれたしね」
「そうだよな」
「確かに正妻さんとの間にお子さんがあったらね」
 その場合はというのだ。
「優先されたけれど」
「そうだよな」
「徳川将軍も」
 幕藩体制即ちそうした考えの中心にある人物達もというのだ。
「そうでない人なんてね」
「幾らでもいるわよね」
「というか側室さんとの間に生まれてない将軍様の方がね」
「多いの」
「そうだと思うわ」
「そうなのね、というか今お妾さんなんて」
 かな恵は眉を顰めさせて言った。
「いたらね」
「大変でしょ」
「大スキャンダルよね」
「浮気だ不倫だってでしょ」
「そうなるわ」
「けれど昔はね」
「お妾さんいたのね、偉い人は」
 食べつつ述べた。
「そうだったのね」
「そうよ、昭和までね」
「政治家とか社長さんとか」
「作家さんでもね」
「それが普通だったのね」
「昔はね。お母さんもそういうの好きじゃないけれど」
 これは女性だからである、かな恵の母も現代日本の女性であるのでその一般的と言える倫理観に従ってこう考えているのだ。
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