第百十八話 戸籍謄本その二
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「お葬式から帰ったらな」
「お塩頭からかけるのね」
「力士さんも土俵にかけるだろ」
父はそれの話もした。
「あれもだ」
「清めのお塩ね」
「そうなんだ、清めることはな」
このことはというのだ。
「日本だとな」
「大事なことで」
「そして清めるのは汚れだろ」
「汚いとね」
「穢れをな、そして特にな」
「死の穢れなの」
「牛や豚を殺すとな」
そうしたことをしていると、というのだ。
「死の穢れでな」
「そうした人達は差別されてるの」
「そうだ」
「そんな理由があったのね」
「そうしたこともわかるから」
母はまた娘に話した。
「戸籍謄本はね」
「滅多に出してくれないのね」
「お役所の人達もね」
「そうなのね」
「お母さんも別にね」
母は眉を顰めさせ真剣な顔で述べた。
「被差別部落とかね」
「どうでもいいわよね」
「そう思ってるわ」
「お父さんもだ」
父も言ってきた。
「そんなものどうしたんだ」
「八条学園って世界中から人集まってるでしょ」
「白人の人も黒人の人もいるな」
「民族も宗教も色々でね」
「そうしたところにいてな」
父はさらに話した。
「お父さんの会社も世界各国の人がいるんだ」
「この団地だって外国の人多いでしょ」
「八条グループの会社の社員さんと家族の場所だからな」
「世界中から人が来ている企業だしね」
「っていうか何が悪いんだよ」
今度は弟が言ってきた。
「被差別部落って何だよ、風呂入ったら生きもの殺した血なんて洗い落とせるだろ」
「そうよね」
かな恵は弟の言葉に頷いた。
「というか牛も豚もね」
「その人達いないと食えないだろ」
「皮だって使えないしね」
「俺ホルモン好きだからな」
彼はこれが好物の一つであるのだ、かな恵もそうでホルモンが夕食だとそれを肴に絶対に酒を飲んでいる。
「それでな」
「そのホルモンだってね」
「そうした人いないと食えないだろ」
「そうよね」
「何が悪いんだよ、あとな」
「あと?」
「何か昔お妾さんの子供だとな」
弟は夕食を食べながらこんなことを言った。
「差別されたんだろ」
「そうしたこともわかるのよ」
母は弟にも話した。
「戸籍謄本だとね」
「本人さんがそのこと知らなくてもか」
「わかるのよ」
「そうなんだな」
「お母さんの知り合いでお父さんがね」
その知り合いの人のというのだ。
「ご兄弟の中で一人だけお母さんが違ったのよ」
「そのお妾さんの子供か」
「息子さんも知らなかったのよ」
「そうだったのか」
「その人のお父さんのご兄弟姉妹も何も言わなくて」
その人だけ母親が違うことをだ。
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