39:願いを込めて
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たり、酷い事もするよ。……でもね、本当は違うんだよ。本当は、お母さ――ううん、ボクみたいに、キミと一緒に居られる人が、いっぱいいるんだよ……」
スク、スクと淀みなく指が透き通る滑らかなそれを、指と手の平で温めるように梳かしていく。
するとユニコーンの目が、心地良さそうにとろんと少しずつ細められていく。
その姿が可愛くて、そして今はボクを信じてくれているという愛おしさも同時に胸に溢れ、ボクの心もまた温かくなる。
そうなのだ……信じあうことは、こんなにも温かく、心地よいものなのだ。
これをボクは、この子とずっと共有していきたい。
もっと、知りたい。この子の事を。ずっと……一緒にいたい。
だって、この子は……ボクの大切な、友達、なのだから。
……そしてその想いが、ボクにふとした天啓をもたらした。
「…………そうだ。いいこと、思いついたよ」
ユニコーンは眠そうな目をチラリと此方に向ける。
「ボクが、キミにいいものを二つあげる。一つは……キミの《名前》」
ボクは微笑みで、膝の上のその横顔を見下ろす。
「――……《ルビー》。……それが、キミの名前だよ」
ボクは名付ける。
ボクを見つめる、その涙滴型の真紅の目にそっくりの宝石の名を。
この子がボクを信じられた『心』と、人を信じられる『勇気』を宝石言葉の意味を持つ、その奇跡の結晶の名を。
「もう一つは、キミへの《歌》。――……キミが、少しでも人を信じられるように、願いを込めて……」
そしてボクはすう、と息を吸い、囁くように口ずさむ。
……ボクにとって、この世界で何よりも大切な……この膝の上の、小さな命を想う歌を。
――この時のボクは知らない。
――すぐ足元の階下で、何を画策されているのかを。
――そして、この歌が…………ルビーと交わす最後の言葉になることを。
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