39:願いを込めて
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が……」
ボクはその背に語りかける。
この子は宴の時、ボクの背から一時も離れようとせず、ひどく怯えていた。それがボクらが今この個室に逃げてきた大きな理由のひとつなのだが……やはり、この子は人の事を信じきれていないようであった。
「だいじょうぶだよ。ボクは、そう思ってる」
すると、なぜ、と問いたげにユニコーンが寂しげに振り向いた。
かつてSAO公式ページで見たサンプル画像とは少し違う、真円でなく涙滴型のやや鋭い紅い目が、ボクの翠の目と視線を交わす。
確かに、ボクには友達と呼べる《人》は居ない。……それは今も同じだ。唯一の友達は、目の前のこの子だけ。
それに、階下のあの人達とはフレンド登録すらしていない。システム上では、彼らとはただのレイドパーティ関係であり、一般パーティ以上ギルド未満の、大人数協力型クエストのクリアを目的とした単なる集まりの一員だけであるという感は否めない。そして……ボクの心情的にも、彼らにそれ以上の思い入れがある、といえば首を横に振らなくてはならないだろう。
けれど、パーティ員の人達とは、かれこれもう一ヶ月以上の付き合いになる。それに、今ではボク達の為に宴も催してくれている。
なにより……
「ボクは……信じてるよ。……あの人達のこと」
現実世界で、友達が出来なくて両親に泣きついていたボクに……お父さんとお母さんは、頭を撫でて慰めながら、よく言っていた。
人は、信じあうからこそ互いに居られるのだ、と。
人は、本当は温かい存在なのだ、と。
ボクは、お父さんがボクと一緒に居るときの幸せそうな顔を見て……そしてお母さんに抱き締められた時の、その全てを委ねられる柔らかな温かさを証に、それを信じて今まで生きてきた。
……だから、あの人達もきっと同じなのだと、ボクは信じている。
「……おいで」
ボクはベッドに座ったまま、膝の上にあった手を広げ、ユニコーンを招く。
すると、今では何の警戒もすることなくコツコツと蹄で木の床を鳴らして近寄り、ベッドにひょいと飛び乗って足を折り、何も臆することなくボクの膝の上にその首を乗せてくれる。
そしてボクは、
「ねぇ……これでも、人を信じられない……?」
と、その首の上に……そっと手を添えた。
「分かるでしょ……今、ボクとキミは互いに安心しきって、身も心も委ねあってるのが……。これが、信じあうってことなんだよ……」
優しく、諭すように。
両親が教えてくれたことを……今ボクが、この子に伝えていく。
「だいじょうぶ、だいじょうぶだよ。キミがボクを信じてくれたように……あの人達のことだって信じられる時が来るよ。きっと……」
その鬣をゆっくりと撫でる。
「……確かにね、人は冷たかっ
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