第一章
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浮気王は違う
その老人、仲村剣は若い頃から浮名を流していたことで有名である、二十で結婚したとのことだが六十年間寄り添っている妻以外にもだ。
「お妾さん?いつも五人いるぞ」
「爺さんあんた何者だよ」
居酒屋で知り合った若い工事現場の兄ちゃん斎藤達也の言葉だ。威勢のよさそうな小柄で茶髪で引き締まった身体の作業服の似合う二十代前半の男だ。
「五人って」
「今は六人じゃ」
「余計凄いぞ、おい」
「一ダースおった時もあるぞ」
「星座か干支だな」
「十二神将とか十二天とかのう」
「仏様かよ、しかし何でそんなにお妾さんいるんだよ」
「いや、わしは隣の県で造り酒屋をしていて山を幾つも持っていて銃のマンションと県庁所在地にビルもあってな」
「大金持ちかよ」
「地主でな」
「聞いた話だと大地主だな」
「幸いな、店も三十はあってな」
「金あるんだな」
「それで世話をしている女の人もおってじゃ」
「その人達がお妾さんかよ」
「それで今年八十二であるが」
その歳になるがというのだ。
「六人おる」
「凄いな」
「これまで風俗含めて一万人切りじゃ」
「ある意味尊敬するよ」
斎藤は仲村と向かい合って飲みつつ言った。
「爺さんをな」
「わしなんか尊敬せんでもっといい人を尊敬するのじゃ」
「そこまで女好きだと尊敬するよ」
これが斎藤の返事だった。
「お金はどうでもいいけれどな」
「それはいいか」
「お金は自分で稼いでるからな、高校を卒業してからな」
「だからか」
「酒とゲームに使ってるよ、これでも貯金あるぜ」
「それは何よりじゃ」
「ああ、それでそれだけお妾さんいて遊んで何もないのかよ」
斎藤は梅酒のジョッキを手に焼酎をグラスで飲んでいる仲村に問うた。
「奥さんが怒ったりお妾さん同士のいざかいとかな」
「そこは皆わかってくれておってな」
「何もないか」
「これで子供は二十の頃の長男が最初でかれこれ五十五人おるが」
「徳川家斉さんと同じかよ」
「うむ、しかし皆認知しておる」
自分の子供と、というのだ。
「問題ない」
「そっちもか。しかし浮気してその浮気相手の彼氏さんとかな」
「人妻と彼氏持ちは相手にせん」
きっぱりとだ、仲村は言い切った。
「お妾さんと風俗だけじゃ」
「それで一万人かよ」
「そうじゃ、だからな」
「揉めないんだな」
「浮気をしても相手が納得してな」
そうしてというのだ。
「そのうえでな」
「付き合ってる相手がいない人と浮気するんだな」
「それがミソじゃ、だからわしは一度もじゃ」
「そっちで揉めたことはないか」
「左様、あんたもそうしてみるか」
「いや、止めておくよ」
斎藤は仲村に目を座らせて答えた。
「
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