第二章
[8]前話
それを続けた、だがある日のこと急な連絡を受けて病院に行くと。
「癌ですか」
「はい、それでです」
医師は久美子に冴子の病室で話した。
「喉頭癌で手術で治りますが」
「喉ですね」
「ですから」
「喋られなくなりますか」
「あの、それでお話は」
「ありません」
久美子は母を冷たい目で見据えて医師に答えた。
「もう家を出ていますし縁もです」
「切っていますか」
「冷たい人なんですよこの人」
冷たい目で見て言うのだった。
「テストで全教科満点でないと話しかけないし怒る」
「そんな親御さんだったのですか」
「そして高校卒業してからずっと離れていても」
そうしていてもというのだ。
「私何とも追わなかったですしこの人も会いに来たこともです」
「なかったですか」
「そんな人でしたから」
だからだというのだ。
「いいです、これで帰ります」
「お世話は」
「しません」
きっぱりとした返事だった、母が自分を弱弱しい顔で見ていることは気付いているが完全に無視していた。
「これで帰ります」
「もうすぐお話出来なくなりますが」
「話しかけてくれなかった人とお話することはありません」
「ああ・・・・・・」
冴子は自分を見ようともしなくなった娘に何か訴えようとしていた、だが。
久美子はその母を無視した、そしてだった。
病室を後にした、それからもう二度と母とは会わないつもりだった。
だが結婚して娘が出来てから夫と娘にかなり言われてだった。
「許すべき?」
「うん、もう随分経ったし」
「お祖母ちゃん許してあげて」
こう言われてだ、それでだった。
喋られなくなっている母のところに一家で行った、そしてその母に筆談を申し出た、するとだった。
母はペンで紙にまずは御免なさいと書いた、そして自分の子育てが間違っていたことを話した。それから親子で筆談をしていきそこからだった。親子はまた親子になっていった。
冴子はそれからも長生きしたがもう満点でなくては駄目だと思わなくなった、その結果がどうなるかわかったので。
そして娘はそんな母への冷たい仕打ちは満点ではないとわかった、夫と娘に言われて。そしてお互いに満点でない親子としてやりなおしていったのだった。
満点以外認めなかったら 完
2024・2・20
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