暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪 補遺集
第二部 1978年
原作キャラクター編
甘言 KGBのベアトリクス誘拐未遂IFルート 
[4/4]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
)をくねらせて、彼女は救いを乞うような火の息をあえいだ。
「どうしたもこうしたもあるか。君の事を聞いて、飛んできた」
大きく襟ぐりの開いた濃紺のセーターを着た、妻の顔を見た途端、ユルゲンの胸が締め付けられた。
思い出したくないのに、早朝のあの出来事が頭をかすめてしまう。
KGB工作員に、口汚く娼婦とののしられた事に苦しんでいた。

「とにかく入って」
ベアトリクスは、ユルゲンの手を引っ張って、玄関の中にうながしてくれた。
妻の手のひらの温もりは心地よい。
 こうして感じている温もりも、絆も、心を傷つけられても、一層強固なものとして感じられる。
黙って、妻に従った。

「君には怖い思いをさせた。だから……」
 案外、ベアトリクスは、素直に、ユルゲンのまえへ寄っていた。
炎の様に、二人の目がぶつかり合って燃え合った。
ユルゲンはちょっと、ベアトリクスへも気がねする風ではあったが、
「だったら、忘れさせてくれる」
ベアトリクスの声はわずかに震えていた。感情を押し殺したような言葉だった。
妻の瞳に、どこか妖艶な輝きが浮かんだ。
ユルゲンは、深くはっきりと、意思を込めて、うなづいた。
 ゆっくりとベアトリクスの顔が近づいて来る。ユルゲンは何も考えることも出来なかった。
視線をそらさずにいると、さらに妻の顔が近づいて来る。
鼻の頭がこすれ合ったかと思った瞬間、柔らかな唇の感触がした。
妻の顔が目の前にあり、温かく柔らかい唇の感触にどこか、陶酔していくのを感じた。
[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ