第二部 1978年
原作キャラクター編
甘言 KGBのベアトリクス誘拐未遂IFルート
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)をくねらせて、彼女は救いを乞うような火の息をあえいだ。
「どうしたもこうしたもあるか。君の事を聞いて、飛んできた」
大きく襟ぐりの開いた濃紺のセーターを着た、妻の顔を見た途端、ユルゲンの胸が締め付けられた。
思い出したくないのに、早朝のあの出来事が頭をかすめてしまう。
KGB工作員に、口汚く娼婦とののしられた事に苦しんでいた。
「とにかく入って」
ベアトリクスは、ユルゲンの手を引っ張って、玄関の中にうながしてくれた。
妻の手のひらの温もりは心地よい。
こうして感じている温もりも、絆も、心を傷つけられても、一層強固なものとして感じられる。
黙って、妻に従った。
「君には怖い思いをさせた。だから……」
案外、ベアトリクスは、素直に、ユルゲンのまえへ寄っていた。
炎の様に、二人の目がぶつかり合って燃え合った。
ユルゲンはちょっと、ベアトリクスへも気がねする風ではあったが、
「だったら、忘れさせてくれる」
ベアトリクスの声はわずかに震えていた。感情を押し殺したような言葉だった。
妻の瞳に、どこか妖艶な輝きが浮かんだ。
ユルゲンは、深くはっきりと、意思を込めて、うなづいた。
ゆっくりとベアトリクスの顔が近づいて来る。ユルゲンは何も考えることも出来なかった。
視線をそらさずにいると、さらに妻の顔が近づいて来る。
鼻の頭がこすれ合ったかと思った瞬間、柔らかな唇の感触がした。
妻の顔が目の前にあり、温かく柔らかい唇の感触にどこか、陶酔していくのを感じた。
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