第二部 1978年
原作キャラクター編
甘言 KGBのベアトリクス誘拐未遂IFルート
[1/4]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
1978年6月28日。
ここは、早朝5時の東ベルリン。
東独の国家人民軍がソ連の対応で大童になっている一方、ソ連軍基地は静かだった。
市内にある第6独立親衛自動車化狙撃旅団本部の一室で怪しい影が蠢く。
そこでは今まさに、戦術機隊幕僚であるユルゲン・ベルンハルトに関する密議が凝らされていた。
「すると、ベルンハルト中尉を我等に引き込むと仰るのですか」
「あの男は殺すに惜しい。使いをやって我が方に迎え入れたい」
KGBの秘密工作員でもある、エフゲニー・ゲルツィン赤軍大佐は、白皙の美丈夫を欲していた。
「そこでだ。手練れを送って、ベルンハルトの私宅を訊ね、妻を拉っしてこい。
妹と一緒であれば上出来だ。さすれば奴も話し合いに応じよう」
ユルゲンたちがソ連の不審船に対応してる隙をついて、ベアトリクスの誘拐を命じたのだ。
「了解しました。同志大佐」
KGBの工作隊は、ベルリンと言う事もあって商人服(背広)に着替え、
「美丈夫の妻と妹を引き合わせましょうぞ」と大佐に語り、意気揚々と出掛けて行った。
まだ、6時にもならない時間だというのに、ベルンハルト邸の呼び鈴が、連打される。
士官学校に行く準備の為に、シャワーを浴びていたベアトリクスは、呼び鈴の音に慌てた。
大童で、士官学校の制服姿を着こみ、玄関に向かう。
髪も乾かぬ内に、ドアの隙間から、そっと覗く。
ドアの前に立つ男の仕度は、季節外れの分厚い冬外套に、ホンブルグ。
怪しげに思うも、慌てたせいか、ドアの内鍵をしないまま対応してしまった。
不気味な男は、いきなりドアを全開にして、
「奥方、御主人と妹さんは何方に……」と、ベアトリクスに訊ねるも、
「随分たどたどしいドイツ語ね。貴方、ソ連人でしょ」とロシア語で返した。
男は、出し抜けにアッハッハッハと大笑いし、不敵の笑みを湛えた。
「へえぇ、お若いのにロシア語がこんなに出来るとはね」
――東独に限らず、ソ連の統制経済の影響下にあったコメコン諸国において、第一外国語はロシア語だった――
その時、おり悪くアイリスディーナが現れ、
「ベアトリクス、誰か来たの」と、灰色の制服姿で声を掛けた。
咄嗟に振り向いたベアトリクスは、
「110番!今すぐに」と大声で、指示を出した。
――ドイツ警察の緊急通報番号は日本と同じ110番である。
1973年以降から2009年の間まで唯一の緊急通報回線だった。
今日は欧州共通の緊急通報番号112番と併用されてる――
指示を受けたアイリスディーナは、即座に、
「怪しい男が来て、姉と言い合ってるんです」と人民警察に電話を入れた。
そして、裏口から駆け出して、近くの車の中で護衛の任務にあたっているデュルクに声を掛け、
「
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ