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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
敢闘編
第七十九話 狩りの準備
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私だけじゃない、オットーやマイクだって通って来た道さ」
エリカの手を握ると、彼女は強く握り返してきた。これくらいの公私混同はいいだろう?
「…参謀長、艦隊を三時方向にスライドさせる。その後、微速で後退だ」
「了解しました……全艦、三時方向に移動せよ!攻撃の手を緩めるな!」


4月15日13:30
銀河帝国軍、マッケンゼン艦隊旗艦マルクグラーフ、
ヨッヘン・フォン・マッケンゼン

 敵艦隊は十時方向に移動し、そのまま後退しつつある。擬態か?ヴィーレンシュタインの影に隠れるつもりだろうか?
「閣下、敵が後退しつつあります。我々を誘う罠ではないでしょうか」
「どうだろうか…敵の反応を見る。右翼を前へ」
艦隊の右翼が敵を追って前進を開始する…。
「敵艦隊、後退を止め前進を開始、我が方右翼に攻撃を集中させています」
あのオペレータにも感情はあった様だ、報告する声が甲高くなっていた。
「右翼、停止せよ。微速で後退だ」
此方の右翼が後退に転じると、敵は再び後退を始めた。ならば…。
「右翼、再度前進せよ」
右翼が再度前進を始めると、敵も再び後退を止めて逆撃を開始した。今度は先程よりも敵の攻撃の勢いが強い。
「右翼、停止せよ。敵艦隊が有効射程距離を離脱するまでは攻撃はそのまま続行だ」
そうか、敵は恒星を背に布陣する事で背水の陣と見せかけて、撤退の時期を伺っていたのか。後退後の逆撃は此方の追い足を鈍らせる為のものだろう。だが…。
「閣下、敵は撤退の時期を伺っていた様ですな。おそらくあの逆撃は我々の追撃の意志を挫く為のものでしょう」
確かにそう見える。だが…では何故わざわざ敵は恒星を背に布陣したのだ?我々を先に発見していたのだから、撤退する時間はたっぷりとあった筈だ。偵察艦艇を先に退避させる為にわざと平文で発信、我々の目を向けさせてその時間を稼ぐ…それでも安全に撤退出来た筈だ……何故…。
「敵艦隊が反転しヴィーレンシュタインの影に入っていきます。増速中」
「追撃を行う。だが、急がずともよい。まずは陣形を確実に再編せよ」


 
4月15日15:15
自由惑星同盟軍、第十三艦隊旗艦グラディウス、
ヤマト・ウィンチェスター

 「敵艦隊、我々を追撃中、五時方向」
敵はそのまま我々についてきてくれる様だ。ヴィーレンシュタインの反対側から出て来られたらどうしようかと思ったけど、これなら目論見通りだ。
「よし。艦隊針路をシャンタウ方向へ。艦隊速度最大」
「了解しました」
俺とヤンさんのやり取りに、ワイドボーンが大きな音を立てて立ち上がった。
「閣下、このまま撤退なさるのではないのですか」
「そうだけど、囮を演じなければならないからねえ。我々がシャンタウ方向に針路を取れば、相手は我々を必ず追って来るだろう?」

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