敢闘編
第七十九話 狩りの準備
[1/9]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
帝国暦485年4月15日09:00
ヴィーレンシュタイン星系、恒星ヴィーレンシュタイン近傍、銀河帝国、銀河帝国軍、
マッケンゼン艦隊旗艦マルクグラーフ、
ヨッヘン・フォン・マッケンゼン
再びオペレータの抑揚のない報告が艦橋を支配した。
「叛乱軍艦隊、動き出しました。横陣形のまま近付いて来ます。まもなく長距離砲の有効射程内に入ります……敵艦発砲」
「射て」
叛乱軍め、死ぬ気か?…どう考えても勝ち目の無い戦いだと思うのだが…。
「閣下、両翼を拡げ半包囲体勢を構築すべきです」
馬鹿なのか、このシュターデンという男は…両翼を拡げるという事は中央が薄くなるという事だ。戦いはまだ始まったばかり、叛乱軍にもそれほど損害は出ていないだろう。今そんな事をしたら奴等に中央突破の機会を与えるだけだ。兵力は此方が上だから突破されても挽回は出来る。だが我が艦隊は練度が低いのだ、突破した敵を再び半包囲出来る体勢を整える間に敵はそのまま逃げてしまうに決まっている。初陣であればこそ慎重に戦わねばならぬ、その程度くらい予想出来てもよさそうなものだがな…。
「参謀長、まだその時ではない。今は数的有利を活かし、じっくり射ち合う時だ」
「はっ」
4月15日12:50
自由惑星同盟軍、第十三艦隊旗艦グラディウス、
ヤマト・ウィンチェスター
敵は此方を決死の背水の陣と見て、無闇に動く事を避けている様だ。確かに俺達の方が数が少ないから、帝国軍は焦る必要がないからな。三度ほど疑似突出して誘ってみたものの、帝国軍は動く事がなかった。お陰で損害も比較的少なくて済んでいる。
ヤンさんや他の参謀達がスクリーンを見つめる中、エリカだけが青ざめた顔で俺の横に立ちつくしていた。
「キンスキー少尉、大丈夫かい?」
エリカが青ざめている理由は判っている。いくら夫婦で一緒に居ても、たとえ夫が艦隊司令官で、その妻である自分が副官だとしても、初陣の緊張感というのは重い物だ。スクリーンに映るあの一つ一つの爆発光は、人が死んでいる事の証なのだ。そして、その命令を出しているのは、艦隊司令官である自分の夫…。ハイネセンで待っていれば、理解しなくてもよかった事実。たとえ命令だったとしても、法で裁かれる事はないとしても、自分の夫が大量殺戮を行っているという事実。青ざめながら、立ちつくして震えながら、エリカは今必死にそれを理解しようとしている。一兵士だったら、もっと楽だっただろう。たとえ敵兵を射倒したとしても、命令だから、倒さなければ自分が死ぬのだからとある程度は割り切る事が出来ただろう。だけど、自分の夫はそれを他人に行わせる側なのだ。なんて罪作りな夫なんだ全く。
「大丈夫です、閣下。申し訳ありません」
「謝る必要なんてないよ。軍人である以上、どこかで通る道だ。君や
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ