第1章 守らなければならないものがある
4話「治癒魔法」
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平時はシティの中央にある病院か一番内側の外壁にある戦闘員専用の医務室で、怪我人は治療を受けることになっている。怪我の手当てにはそれなりの道具を用意しておく必要があったり、休ませるためのベッドが必要だったりするから、どうしても場所が限定されてしまうのだ。
だが、あまりにも損傷が激しかったりして怪我人を動かせない時はそういうわけにもいかない。生活区域から離れ、いつ襲撃があるかわからない戦場へ行くのは、戦う力を持たない救護班にとっては覚悟のいることだが、怪我人を運べない以上道具を抱え、自らの足で怪我人がいる場所まで赴く必要がある。
ただし一応そういう状況になった時は動ける戦闘員が護衛役としてつくことになることになっている。マキの取り決めだ。戦闘員が代わりに荷物を運んだり、治療の妨げにならない場所で警備を行ったりする。
素晴らしい行いだと称賛する一方で問題もある。護衛役を担う戦闘員は、余裕がある時は出撃していない戦闘員が担当することになっている。だが、戦闘員自体数が多いわけではない。シティで匿っている人間の数もそう多くはないだろうし、その匿った人間の中で戦う意思がある者といったら更に少なくなる。魔法や体術の訓練を受けた上で選考も一応あるから、またそこで更に人数が減る。その結果、数は常にギリギリ。一回の襲撃で戦闘員のほとんどが招集されるケースもよく見る。だから、一つでも命を救い、またこれ以上犠牲を増やさないために、どれだけ戦闘で疲弊したとしても警戒を続けざるをえないこともよくある。
そこで、今魔法に関する研究員たちが対策として考えているのは三つ。魔法自動人形の量産により戦闘員を確保。"難題魔法"としている"転移魔法"を使えるようにし、怪我人を生活区域の病院へ転移させて治療を行う。そして、同じく難題魔法の"治癒魔法"の使用者を増やすこと。
「……お、見えてきた」
ポーランの隣で、無言で歩き続けて十数分。襲撃があった地点の手前まで戻ってきた。
戦闘員たちは襲撃者の異能により精神を操られ、味方同士で魔法を撃ち合ったり武器で斬り合ったりしていた。さらに私が戦場に到着したタイミングで例外なく全員が自らの首筋を掻き切ってしまった。私が知っている限りでは、全員が倒れ、血の海になっていたはずだ。
だが、全貌は見えていないが、ここを離れて一時間も経っていない割に、綺麗に片付けられているように見える。
「来たぞー」
「お疲れ様です」
ポーランと一緒に、作業をしている戦闘員に声を掛ける。襲撃の対応に当たっていた戦闘員は皆死んでしまったため、この戦闘員は襲撃の対応に当たらなかった者だ。
辺りを見ると、他に戦闘員が数人。医師は来ていないようだ。まあ、それはそうだ。死んでしまった者をどれだけ治療しても無意味だから。
「ポーラン
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