第五十七話 音楽の神霊その十
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「僭越ですが」
「シューベルト君、君が行くか」
「宜しいでしょうか」
「断る理由が何処にある」
ベートーベンはシューベルトに毅然として答えた。
「あるなら言うことだ」
「それでは」
「最初の戦を頼む、諸君そうなった」
ベートーベンは今度は綾乃達に顔を向けて告げた。
「異論はないな」
「あの、異論も何も」
そもそもとだ、トウェインは呆れた顔と声で述べた。
「わい等の話聞く気は」
「ない!」
ベートーベンは胸を張って言い切った。
「人の話を聞いてそれに左右されて何になる!」
「そうですか」
「そうだ!我が道を行くのみ!」
「僕は人の話は聞いてるよ」
モーツァルトは笑って述べた。
「けれど皆から頭に入っていないって言われるんだ」
「そうですか、やっぱり」
「そこでやっぱりって言うんだ」
「伝え聞く性格ですと」
モーツァルトのそれをというのだ。
「やっぱりです」
「そうなんだね、まあ兎に角最初はシューベルト君と戦ってね」
「ほなそういうことで」
「やっていこうね、じゃあシューベルト君も挨拶してね」
「わかりました、では皆さんはじめましょう」
シューベルトは一行に正対し穏やかに顔を向けて頭を下げてから告げた。
「お互い全力で」
「この人はまともやな」
「あの二柱があんまりなだけか?」
羅とメルヴィルは顔を見合わせて話した。
「まあ伝え聞くシューベルトさんはかなりましやしな」
「二柱と比べて」
「よおさんお友達おってな」
「その人等といつも仲よくしてて」
「今も友人は多いですよ」
シューベルトは一行に温厚な声で答えた。
「有り難いことに。常によくしてもらってます」
「そうなんですね」
「それは何よりですね」
「私は果報者です。ではその果報者と戦って下さい」
「はい、最初はええ人で何よりです」
「いきなりトンデモ神霊さんやなくてよかったです」
「私はまともだ」
ベートーベンは自覚なく腕を組んで言い切った。
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