第五十七話 音楽の神霊その八
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「ほんまな」
「そう思うな、自分も」
「ああ、何が一番複雑か」
「人や」
芥川は言い切った。
「まさにな」
「これ以上複雑なもんはないな」
「そや、色々世の中はむずかしいけどな」
「人こそがな」
「一番難しくて」
そしてというのだ。
「それでや」
「そのことを理解することやな」
「そや、人が一番難しい」
「この世で」
「どんな謎よりもな」
それこそとだ、芥川はリーに話した。
「難しいもんや」
「そして中々わからん」
「誰でもな」
「それがわかるとやな」
「それだけでちゃうで」
「自分自身が」
「そや、そのことも頭に入れて」
そうしてというのだ。
「やっていこな、こっちの世界でもそうで」
「起きた世界でもやな」
「同じや」
「そのこと頭に入れてくわ、ほなな」
「これからやな」
「先に進もうな、ここ牢獄やが」
リーは今自分達がいる階について述べた、左右の部屋がまさにそうした部屋でありそこにいるモンスターや神霊の下僕達が向かって来るのだ。
「これは何でか」
「あれや、フィデリオやな」
「ベートーベンさんの歌劇か」
「そや」
施は確かな声で答えた。
「あの人の唯一の歌劇やな」
「そういえばあの作品私も観たが」
そのフィデリオをとだ、リーは答えた。ベートーベン唯一の歌劇であるので上演されることはわりかし多い。
「確かに第二幕がな」
「牢獄やな」
「ああ、主人公のご主人がおるな」
「あの作品は奥さんが旦那さんを助け出す話や」
そしてハッピーエンドになるのだ。
「そうしたお話でな」
「それでやな」
「その牢獄や」
主人公レオノーレの夫フロレスタンが陥れられ入獄させられていたのだ。
「まさにな」
「そうか、しかしその牢獄やと」
それならとだ、中里は言った。
「別に怖いことないな」
「ハッピーエンドで終わるからやな」
「ああ、それでな」
こう施に話した。
「この牢獄の階もな」
「怖くないな」
「そや」
まさにというのだ。
「別にな」
「そういうことやな」
「そしてな」
それでというのだった。
「この階も踏破して」
「そしてやな」
「ベートーベンさん達のとこに行こな」
この時彼等は別に何も心配していなかった、だが。
神霊達の階に行くとだ、ベートーベンは一行に対していきなり生卵を投げてきてそのうえで怒って言ってきた。
「遅いぞ」
「えっ、そうですか?」
「そうだ、何時まで待たせる」
自分の言葉にきょとんとするシェリルに言うのだった。
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